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大阪府吹田市・豊中市・箕面市の皆さん。こんにちは。
大阪府吹田市のESSE動物病院の動物看護師 佐川です(^^)!
「飼い犬に手を噛まれる」という諺があります。
可愛がっていた者から突然裏切られることの例えですが、私は「裏切り」だとは思いません。
嫌なことをされて「NO!」と言えるのは動物の正常な本能だと思っています。
しかし、人間社会に生きるにはそのルールに対応する必要があり、直さなければならない「問題行動」です。
「咬む」の中にも様々な心理が働いているため一筋縄に解決せず、間違った対処をするとより悪化してしまう可能性もあります。
まずは何故「咬む」行動を取るのか、原因をはっきりさせる必要があります。
今回は犬の攻撃行動についてお話していきます(^^)/
犬の攻撃行動は、周囲の人間や動物への危険を伴います。
まずは安全確保を第一として治療に臨みましょう。
「唸る」「歯をむく」「空噛みする」「噛む」などの行動を指します。
お気に入りのおもちゃを取り上げようとした時に、これらの行為が行われれば攻撃行動である可能性が高いです。
全ての犬種において攻撃行動が発生する可能性はあります。
多くは社会化不足や環境、日々の学習によって引き起こされる事だと思いますが、特定の攻撃行動が「遺伝する」犬種は存在します。
護衛犬(ドーベルマン、ロットワイラー、甲斐犬など)は縄張り性の、サイトハウンド(ウィペット、ボルゾイなど)は捕食性の攻撃行動が発現しやすいことがあります。
特に未去勢雄に多く見られ、社会的成熟を迎える12~36ヶ月頃から顕著になると言われています。
体罰は百害あって一利なしです。
体罰で育てられた犬は、人間は怖い者だから逆らわないようにしようと考えます。
外見的には言うことを聞いているようにも見えますが、心の底から人を信用しなくなります。
また、だんだん痛みにも慣れてくるので やがて普通に叩くだけでは言うことを聞かなくなります。
攻撃行動は、犬一頭だけでは発生しません。攻撃する対象がいてはじめて成立する行動です。
犬は攻撃対象となっている人や動物との関わり合いの中で必要性を感じて攻撃しています。
犬の攻撃行動は、次のように分類されています。
【攻撃型:他者を犠牲にしても何かを得ようとする自発的・接触的な攻撃行動】
◎序列関連性攻撃行動:家族という群の中で自分が優位にあると認識している犬が、劣位の家族に対して向ける行動
◎同種間攻撃行動:家庭内において、お互いの優劣関係に対する認識の欠如もしくは不足によって生じる犬同士の行動
◎遊び関連性攻撃行動:幼犬でよく見られる遊び行動がエスカレートして生じる情動的な行動
◎捕食性攻撃行動:赤ちゃんや小動物を対象とし、注視・忍び歩き・低い姿勢といった捕食行動に引き続いて生じる行動
【防衛型:他者からの挑発や脅威によって受動的に生じる攻撃行動】
◎恐怖性攻撃行動:恐れや不安が迫り、回避するために生じる行動
◎縄張り性攻撃行動:自らが縄張りと認識している場所や、自らが防護すべきと認識している対象に近づいてくる個体に対して生じる行動
◎葛藤性攻撃行動:成し遂げたい目的が遮られ、出来ないことへの葛藤からの行動
◎所有性攻撃行動:自ら所有していると認識しているもの(おもちゃ等)を防衛するために生じる行動
◎転嫁性攻撃行動:犬が感じた攻撃的な情動を異なる攻撃対象に向けるときに生じる行動
◎母性攻撃行動:母犬が子犬を守るために示す行動(偽妊娠の場合も生じることがある)
◎疼痛性攻撃行動:痛みによって生じる防衛的な行動
◎特発性攻撃行動:予測不能で、医学的にも行動学的にも検査上原因が認められない行動
※株式会社インターズー「臨床行動学」より
飼い主様とお話しする中で、特に「恐怖性」と「所有性」からの攻撃行動が多いと感じます。
例)目薬をさす時に咬みついてきた
これは目薬に対する「恐怖性攻撃行動」です。
人は愛犬の為に目薬をさしますが、犬にとってはどうでしょうか。
突然身体を拘束されて、未知の物が近づいてくる恐怖を感じます。
飼い主さんの「上手く出来るかな…」という不安も伝わって犬は極度の緊張状態になります。
言葉を話せない犬は「怖い!」「やめて!」を伝えるために暴れ、咬みつきます。
これが攻撃行動の始まりとなります。
成犬の知能は5歳児くらいの知能レベルであるという報告もあります。
攻撃行動を不意に発生させた際、飼い主が身を引くことで「※負の強化」が生じ、攻撃行動が悪化していきます。
※負の強化:犬が行動した後に<刺激>が消失し、その結果その行動の頻度が増加することをいう
目薬の例で言うと、
嫌なこと(拘束・近づいてくる目薬)が起こる。
⬇︎
逃れるために行動(咬みつく)を起こす。
⬇︎
自分に都合のいい結果(飼い主さんが犬を離した)になった。
このことから、嫌なことがあれば咬みつけば飼い主さんは手を離してくれるという学習をすることができます。
これが繰り返されることでどんどん激化していきます。
パピーの頃は「遊び」や「興味」で甘噛みをします。
人間が目や手を使って確認するように、鼻や口を使って確認する習性があります。
甘噛みを「痛くないから」「その内治るだろう」と油断していると、
いつの間にか手の付けられない攻撃行動へと進化している場合があります。
甘噛みへの対策は「カムアットトレーニング」がオススメです。
~カムアットトレーニング~
①甘噛みされたら「あ!」と大きな声を出しましょう。(噛んだことへの印象を付けます)
②すぐに立ち上がり30秒ほど犬が見えない位置まで立ち去りましょう。(社会的罰は犬にとって最も有効)
③犬が落ち着いたのを確認して遊びを再開しましょう。
これを繰り返すことで、
「歯を当てることで大好きな飼い主さんが居なくなり遊びが中断されてしまう」と学習していきます。
※村田 香織 『こころのワクチン』より
当院に写真付きの詳しい本がありますので、気軽にお声がけ下さい♪
まず取り組むべきは、①「環境改善」で攻撃を誘発させないようにし、次に②「行動修正」を時間をかけて行いましょう。
③「薬物療法」はあくまでも補助であり、薬物療法だけで制御できると考えてはいけません。
時に④「外科的療法」で対応する場合もあります。
攻撃が発生する前後の状況を分析し、どのような生活環境であれば発生しにくくなるのか検討しましょう。
例えば
犬がリビングでリラックスしている時に家族がリビングに入ってくると吠えて噛みつくという場合、
犬がリビングをテリトリー化(縄張り性)していることが原因と予測されます。
大きめのサークルを用意しハウストレーニングを行うことで、テリトリーがサークル内へと縮まり、リビングでの発生リスクは減少すると思います。
また、リーダーシップトレーニングや上下関係を伝えるために
私は「生涯ただのものなどない法」を意識して行うようにしています(*^^)v
これは犬が要求する度に「お座り」などの号令を与え、その指示に従わなければ要求には答えず、自分が欲するためには人の指示を聞くというクセを学習させる方法です。
例)
犬が撫でてもらおうと近づく→「お座り」と号令を出す→お座りをする→撫でる
この方法は、犬にとっても人の号令を聞くと「報酬」が得られるため
飼い主から下される号令さえもポジティブな気持ちで待てるようになります。
また、飼い主の顔をよく見るようにもなるので(号令ないかな?という気持ち)信頼関係が育まれると思います。
攻撃行動のきっかけとなる刺激に対する脱感作・拮抗条件づけ。を用いた行動修正法を行いましょう。
それでは、先ほどの目薬が嫌いな子に「※拮抗条件づけ」を使って行動修正してみましょう。
※拮抗条件づけ:過去の経験から苦手意識を持っている刺激(嫌悪刺激)に対し、それを「良いことが起こる前触れ」と学習させ、「不快」から「快」の刺激に変えていく方法
目薬の例)
目薬を見ると走って逃げるレベルと仮定します。段階を踏んで慣らしていきましょう。
・まず、目薬を見せてすぐにご飯(又はおやつ)を一粒与えます。目薬に対する不快なイメージを好きなご飯を使って軽減させましょう。
目薬に対して不快なイメージを払拭出来れば、次のステップへ進みます。
・犬にお座りさせ飼い主は犬の背中側に回ります。ご飯を数粒持っておき、このタイミングで「いい子だね」と褒めながら数粒与えます。
後ろから手を回して犬の顎を軽く押さえ、もう片方の手で目薬を持ちます。犬の目尻から目薬を垂らし、終わったらご飯を与えてよく褒めます。目薬の後には美味しいご飯(褒美)が貰えると学習出来れば、苦手な目薬を頑張ってくれるようになり、じきに慣れていきます。
ご飯に興味がない子は、終わった後におもちゃで楽しく遊ぶなど、その子その子に合わせた褒美を与えてください。
点耳薬も同様に、好きな物と=(イコール)で結べるようにしてみると協力してくれると思います(^^)
適切な行動が取れるようになるまで根気強く続けていきましょう。
薬物療法と聞くと怖いイメージを持つ方もいらっしゃると思いますが、
薬物を行うことで行動修正を円滑に進めるサポートをしてくれることがあります。
例)恐怖性攻撃行動の場合は、神経伝達物質(特にセロトニン)の量を変化させる薬物を選択し、
不安によって攻撃している場合は抗不安効果のある薬物を使用し、攻撃衝動を抑えます。
例)雄性ホルモンである「テストステロン」が一因となっている攻撃行動には、去勢手術。
過去に咬傷事故を起こした犬には、犬歯切断術。激しく吠え近隣からの苦情が絶えない場合は、声帯除去術。
など、時に外科的療法で問題を和らげる方法も存在します。
攻撃行動はとても難しい躾だと思います。頭では分かっていても、なかなか思った通りになりませんよね。
行き詰ったら動物病院や、躾のトレーナーさんを頼ってくださいね。ご家族の皆様と愛犬との幸せな未来を願っております(^^)☆
動物看護師 佐川
大阪府吹田市青山台2−1−15(北千里駅から徒歩8分)
駐車場は10台以上あります。(豊中市、箕面市、茨木市、摂津市からも車で来院しやすいです)
皮膚科(アレルギー、アトピーなど)、腫瘍科(がん)、循環器科(心臓病、腎臓病)、外科手術(麻酔管理と痛みの管理をしっかり行います)を得意としています
健康診断、予防接種、フィラリア・ノミダニ予防、避妊・去勢手術も行います。ご相談ください