ブログ
Blog
ブログ
Blog
こんにちは、ESSE動物病院看護師の森谷です。
今回は熱中症の時に少しご紹介した短頭種気道症候群についてお話ししたいと思います。
「短頭種気道症候群」と聞いて、あんまりピンとこない、初めて聞く病名だと思われる方もたくさんいらっしゃると思います。
まず、短頭種とはパグやフレンチブルドッグ、ボストンテリアなど鼻ぺちゃのわんちゃんたちのことを指します。
そんな『短頭種の気道の病気』と何となくイメージできるのでないでしょうか?
そしてぜひ思い返してみてほしいのですが、
鼻ぺちゃのわんちゃんが呼吸するときに”ガーガー”または”ブーブー”言っているのを聞かれたことはないですか?
鼻ぺちゃのわんちゃんたちがそんな呼吸をするのは普通のことなんじゃないの?と思われがちではありますが、実はそんな音がするのもこの病気の症状の1つです。
では短頭種気道症候群について説明していきたいと思います。
短頭種気道症候群(Brachycephalic Airway Syndrome : BAS)とは短頭種特有の平べったい顔、丸い頭などのために鼻腔が圧迫されたり、喉の部分が変形することで呼吸器症状がでる症候群のことです。
・外鼻孔狭窄
・軟口蓋過長
・気管低形成
・喉頭小嚢の外転
・喉頭虚脱
などの病気が合併して起こります。
生まれつき鼻の穴が狭くなっている状態のことです。
この写真は左が短頭種の子の鼻で、右はマズルが長い子の鼻の写真です。
明らかに鼻の穴の大きさが違いますよね?
これでは右の鼻の子と同じように呼吸しても十分に酸素が取り込めません。
軟口蓋とは上顎の喉付近の柔らかいところの部分のことで、嚥下するときに食べ物が口から鼻に入らないようにする役割をしています。その軟口蓋が長く分厚くなっており、息を吸うときに気管の入り口を塞いでしまうため呼吸障害が起こります。
さらにこの軟口蓋は呼吸の度に負担がかかり、さらに長く厚くなっていくため加齢により症状が増していきます。
先天的に気管の成長が不十分で気管が正常と比べて狭くなっている状態です。
気管の病気として気管虚脱は耳にされることが多いかと思いますが、気管虚脱の場合は呼吸をする時に気管が狭くなったり元の太さに戻ったりします。しかし気管低形成の場合は太さは変わらず常に細い状態が続きます。
喉の奥にある喉頭小嚢が迫り出してくる病気です。この組織が出てくることで気道が狭くなってしまい呼吸困難になります。
(上:正常な喉頭、下:喉頭小嚢の外転により狭く気管が狭くなっている)
好発犬種としては、ブルドッグ、フレンチ・ブル、ボストン・テリア、パグ、シーズー、ボクサー、ペキニーズ、狆が代表的ではありますが、他にもチワワ、ヨークシャー・テリア、マルチーズ、ポメラニアン、キャバリアなんかもかかりやすいと言われています。
個人的にはポメラニアンやヨークシャー・テリアもそうだと聞いた時は正直びっくりでした。
・呼吸するときに”ヒューヒュー””ガーガー””ブーブー”音がする
・パンティング(口を開けて早く呼吸をする)
・いびき
・寝ているときに呼吸が止まる
・咳をする
・誤嚥性肺炎
・肺水腫
・食欲不振
・嚥下障害(上手くものが飲み込めない)
・嘔吐・吐出
・運動したがらない
・チアノーゼ
・失神・虚脱
寝ている時だけいびきをかくといった軽い症状から呼吸困難で死に至るような重症例もあります。
子犬の頃はいびきだけですんでたのに、歳をとっていくにつれて色々な症状が出てくることもあります。
これに関しは前回のブログを読んでいただいた方はご存じだと思いますが、短頭種の子たちは呼吸が上手くできないため、熱の放出の効率が悪くなります。よって、体温を下げることができず熱中症になりやすくなってしまいます。熱中症は生死に関わるのでぜひ熱中症についてのブログも読んでみてください。
短頭種気道症候群の子は呼吸したときに空気が通過する鼻・咽頭・気管などが狭くなっているため空気の出入りが上手くできません。そのため呼吸困難に陥りやすくなります。また、上手く酸素が取り込めないので頑張って呼吸をすることで気道にも負担がかかりることで、気道が狭くなり、さらに呼吸がし辛くなり、また頑張って呼吸をするという悪循環が発生します。
また、全身麻酔では自発呼吸で上手く酸素が取り込めなくなったり、軟口蓋過長などにより呼吸が止まる危険性があるので、短頭種の全身麻酔(特に麻酔の導入・麻酔からの覚醒)は要注意と言われています。
太ることで首の周りにも脂肪がついてしまい元々狭い気管がさらに圧迫されてしまいます。それによっていびきや睡眠時無呼吸などを悪化させる可能性があります。肥満の子は酸素の必要量も多くなるため、頑張って呼吸することによって余計に気道に負担がかかります。
短頭種の子たちは太りやすい犬種と言われています。中でもパグさんは特に太りやすい犬種なので十分に気をつけてあげてください!
短頭種の子たちは呼吸が上手くできないことで体温が上がりやすく、下がりにくいです。体温を下げるために早い呼吸をしてしまいます。パンティングをしているときは涼しくしてあげてください。夏は特にですが日頃から熱中症にならないように十分に室温管理をしてあげてください。
短頭種気道症候群は外科手術が可能です!
鼻の穴を広げてあげる手術です。
(左から手術前、手術直後)
左と右とではかなり穴の大きさが違いますよね!鼻の穴が大きくなることで呼吸のしやすさは大きく変わってきます。楽に鼻呼吸できた方がいいですよね♪
鉗子で引っ張っている部分が長く伸びた軟口蓋です。この長く肥大した軟口蓋を適切な長さに切り取って気道を塞がないようにします。
反転した喉頭小嚢を切除し、気管の入口を広げます。
短頭種気道症候群の手術は若年齢のうちに予防的に手術をされることをおすすめします!
加齢によって重症化してしまってから手術するのと、若く症状が軽度のうちに手術をするのとでは手術後の症状の改善率に大きく差が出てきてしまい、若年齢で手術をしておいた方が改善率が高くなっています。
当院では短頭種の子には去勢・避妊手術と同時に軟口蓋過長や外鼻腔狭窄の手術をされることをご提案しています(^_^)
毎年やってくる短頭種の子たちには辛い夏を少しでも楽に、そしてこれからの長い余生を快適に過ごさせてあげたいですね!
まず前提として短頭種気道症候群は内科治療では治すことができません。
お薬で少しでも症状を楽にしてあげる手助けだと思ってください。
ステロイドで喉の腫れを引かしてあげたり、鎮静剤で興奮を抑えてあげたり、気管を広げてあげるお薬を使って呼吸をしやすくしたりとなります。
ですが、長期的に使うことにリスクがあるお薬だったり、飲み薬では効果が一時的であったりと内科治療だけでの管理ではどうしても限界があります。
”予防の為に全身麻酔をかけて手術”となると何だか大袈裟に聞こえてしまい、手術に踏み切ることを躊躇される方も多いかとは思いますが、高齢になってから呼吸困難や誤嚥性肺炎になって死に至る可能性が出てくるのを若いうちに予防しておくのは、避妊・去勢手術をする意味と同じような意味合いではないかなと思います(^_^)
呼吸器の問題で消化器症状が起こるというのも意外かと思いますが(メカニズムはかなりややこしいので省きます)、実際に”頻繁に吐く”だとか”よく水を飲んで吐くんです”と相談を受けたフレンチブルドッグの患者さんも先生からの提案と説明で手術に踏み切っていただき、手術後は嘔吐の症状が改善されたとおっしゃっていただいた方もいました。
ずっと気にして悩まれていた嘔吐が改善されて元気に過ごしてくれているのは飼い主様にとってもワンちゃんにとってもQOLの改善になったのではないでしょうか♪
少しでも多くの方に短頭種特有の呼吸は普通ではないんだということをご理解いただき、少し気にして様子を見ていただけたら幸いです!
当院では毎月第一水曜日に呼吸器を得意とする獣医師の診察も行っておりますので、何か呼吸器で気になる症状がある方や、短頭種気道症候群かな?と思われた方はご相談ください。
まだまだ暑かったり、湿気が多いお天気が続いていますが熱中症や短頭種気道症候群の症状にはくれぐれも気をつけていただいて、鼻ぺちゃさんたちとの暮らしを楽しんでいただきたいです!
ESSE動物病院 動物看護師 森谷
大阪府吹田市青山台2−1−15(北千里駅から徒歩8分)
駐車場は10台以上あります。(豊中市、箕面市、茨木市、摂津市からも車で来院しやすいです)
皮膚科(アレルギー、アトピーなど)、腫瘍科(がん)、循環器科(心臓病、腎臓病)、外科手術(麻酔管理と痛みの管理をしっかり行います)を得意としています
健康診断、予防接種、フィラリア・ノミダニ予防、避妊・去勢手術も行います。ご相談ください