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大阪府吹田市・豊中市・箕面市の皆さん。こんにちは。
院長の福間です。
前々回は腫瘍の認定医試験に出てきた病気について書いていくとお伝えし、
1回認知機能不全の話を挟みましたが、今回は認定医試験に出てきた「脾臓の血管肉腫」について書いていこうと思います。
よろしくお願いします。
それと今回も前回と同様に記事の内容を説明する動画を作りました。
まずそもそもの話、私たちに馴染みのない脾臓という臓器の話からしていこうと思います。
脾臓は、①免疫機能、②造血機能、③血球の破壊、④血液の貯蔵、の働きを持つ臓器とされています。(wikipediaより)
詳しく書くとややこしくなるので、主に免疫細胞を育てて一部の感染症に対しての免疫に重要な場所であり、かつ出血など緊急で血液が必要になった時にプールしていた血液を放出する臓器と考えてもらえたらいいと思います。
ですので、脾臓の腫瘍の時に「脾臓は取ってしまっても大丈夫なんでしょうか?」という質問をよく受けるのですが、
脾臓の機能から考えるとこの質問に対しての答えは、「基本的には大きな問題はありません。一部の感染症に対しての免疫が不安定になるリスクもありますが、犬ではそれらの感染症は稀なので、適切な予防を行えば基本的には問題ないと考えます。」となります。
では脾臓に異常がないかを確認したい時、例えば今回の話を聞いて脾臓に何も異常がないか調べたくなった時どのようにすればいいのでしょうか?
脾臓に対して、脾臓の異常(腫れ、しこりの形成など)がないかを確認する検査方法としては大きく3つあります。
①触診
②レントゲン検査
③エコー検査
①の触診は、一番簡単に行えることがメリットとして考える手法です。デメリットとしては、技量やその犬の筋肉量(腹筋が厚いと細かな触診が難しいです)などに依存してしまうこと、そして細かい評価はできないことが挙げられます。
②のレントゲン検査は、検査時間がエコーと比較して短いこと、他のお腹の臓器や同時にうつる骨や肺なども併せて評価できる点がメリットだと思います。デメリットは、触診同様に脾臓の形を変えないような細かな変化には気づけないことです。
③のエコー検査は、細かな評価ができて、脾臓の形が変わっていない内部構造の異常のみの場合もしっかり確認できる点がメリットです。デメリットは、検査に時間と費用がかかる点とエコー検査の機械の性能によるということです。
個人的には、細かな評価ができる点と細かな評価ができる分大きさの変化も評価しやすい点から、エコー検査を好んで使っています。
上の写真を見ていただければ、エコーのわかりやすさというのが少しわかってもらえるかと思います。
では検査などで脾臓にしこりがあるとわかった後に、
どんなものを考える必要があるのでしょうか?
ある報告では、脾臓にできたしこりのトップ5は、「血管肉腫」「結節性過形成」「血腫」「起源不明の肉腫」「リンパ腫」という内容でした。
この中で、悪性腫瘍は「血管肉腫」「起源不明の肉腫」「リンパ腫」です。
同じ報告では脾臓のしこりが悪性腫瘍であった割合は1/2であったとされ、またその悪性腫瘍の中で1位の「血管肉腫」であった割合も1/2だったとしています。
ではここから犬の血管肉腫に対しての話をしていきます。
先に書いたように、犬にできる脾臓の腫瘍の中で一番発生の多い悪性腫瘍です。
血管内皮細胞というものを起源にする腫瘍で、脾臓や肝臓、腎臓、心臓などにできることがあります。
転移を非常にしやすい腫瘍で、見つかった時にはすでに転移をしているケースも少なくありません。
※この次に2枚脾臓の実際の写真を載せます。苦手な人はスキップしてください。
脾臓の血管肉腫の初期の症状は、基本的にはありません。
ですので、初期の脾臓の血管肉腫が健康診断などで偶発的に見つかった場合は、非常に幸運なケースだと思います。
進行し腫瘍が大きくなってくると、周辺の臓器である胃や消化管を圧迫・刺激することで嘔吐や下痢などの消化器症状を示す場合もあります。
この嘔吐や下痢は比較的軽度で、お薬を飲んだら治ったりたまに出るくらいの症状であることもあるので、この時に検査をして発見できる場合もラッキーだと言えます。
そしてさらに進行し大きくなってくると、何かのきっかけで破裂します。
私の経験では、お散歩中に急にぐったりして動かなくなった、トリミング中に急にぐったりした、などがあります。
この時、脾臓から出血してお腹の中に血が漏れてしまっています。
その出血量によってそのまま亡くなってしまう子もいますし、少しの出血でその出血もすぐ止まった場合は安静にしていれば数日で元気になるケースもあります。
脾臓の血管肉腫が見つかった場合はどうすればいいでしょうか?
そもそも脾臓の血管肉腫が事前にわかることは基本的にはなく、手術などを行い脾臓摘出をした結果診断がつくことが多いです。
ですので、私たちは脾臓のしこりを見つけた時、血管肉腫かもしれないという中で治療を考えないといけません。
治療の第一の選択肢は手術である「脾臓摘出」だと思います。
手術は、
・治療と検査を兼ねる方法であること。
・しこりは仮に良性だったとしても破裂するリスクはあるということ。
これらを理由に挙げて、全身麻酔、手術に耐えられる全身状態であれば、しっかりと検討すべき選択肢だと思います。
またよっぽど大きなしこりでない限りは、脾臓の摘出はそこまで難しい手術でもなく、シーリング装置と呼ばれる血管を止めながら切る装置があれば比較的短時間で行える手術でもあります。
ただ積極的手術を検討できない状態では、2週間から数ヶ月ごとの定期的な検査で経過を見ることもあります。
では、手術をして脾臓の血管肉腫という診断がついたあとはどのような選択肢があるのでしょうか?
脾臓の血管肉腫の場合は、抗がん剤治療を行うことが多いです。
脾臓の血管肉腫に対して手術のみを行った場合と、手術後に抗がん剤治療をおこなった場合とで、どのくらい生存期間が変わったかを調べた報告があり、
手術のみの場合はMST(生存中央値)が1~2ヶ月なのに対して、手術後に抗がん剤治療をおこなった場合のMSTは6~7ヶ月と長生きしたというデータがあります。
もちろんこれがとても素晴らしいデータではないと思いますが、それでも生存期間の延長と状況によりますが根治の可能性も考えると、抗がん剤治療は検討すべき選択肢だと思います。
また抗がん剤治療は、心臓の血管肉腫や転移病変に対して腫瘤の縮小効果もあり、手術ができないケース/位置の血管肉腫に対しての緩和治療としても行うことがあります。
今回は脾臓にできる血管肉腫に関して書かせていただきました。
脾臓という馴染みのない臓器ですが、この病気はどう発見するかがとても重要な腫瘍でもあるので、頭の片隅に覚えていていただければと思います。
ESSE動物病院 院長 福間
大阪府吹田市青山台2−1−15(北千里駅から徒歩8分)
駐車場は10台以上あります。(豊中市、箕面市、茨木市、摂津市からも車で来院しやすいです)
皮膚科(アレルギー、アトピーなど)、腫瘍科(がん)、循環器科(心臓病、腎臓病)、外科手術(麻酔管理と痛みの管理をしっかり行います)を得意としています
健康診断、予防接種、フィラリア・ノミダニ予防、避妊・去勢手術も行います。ご相談ください