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歯肉や舌、口唇などの口腔粘膜に発生し、
口腔内腫瘍のうち発生頻度も悪性度も高い腫瘍です。
臨床症状は、口からの出血、口臭、過度の流涎(よだれ)、摂食障害などが見られます。
痛みが伴った場合には、硬いフードを食べることや、顔周りを触られることを嫌がることがあります。
早期発見には日頃から口内や顔周りを観察することが重要なポイントと言えます。
また、顔周りを触られることを極端に嫌がる子は、診察時に「がんの発見が見落とされる」可能性が生じます。子犬の頃から「口周りを触らせてくれる」、「口の中を見せてくれる」トレーニングをする事が将来的に口腔内腫瘍の早期発見に繋がります。
好発犬種はミニチュア・ダックスフンド、スコティッシュ・テリア、ゴールデン・レトリーバー、プードルなど。高齢犬での発生も多く見られます。
口腔内黒色腫は、メラニン(動物の組織内にある褐色ないし黒色の色素)を生産する細胞が腫瘍化したものです。
黒色を呈することが一般的ですが、中には「乏色素性悪性黒色腫」という見た目が黒色ではなく粘膜色を呈しているものもあります。
確定診断には、細胞学的検査あるいは病理組織検査を実施します。
褐色や黒色の腫瘍は、細胞学的検査での診断が可能となります。
しかし細胞形態がさまざまであり肉腫や独立円形細胞腫瘍を想起させることもあるため、病理組織学的検査のための生検を行う必要もあります。
メラニン顆粒が乏しい乏色素性悪性黒色腫の場合は、細胞学的検査が困難となり、病理組織学的検査を行います。
画像検査は、腫瘍の存在する範囲や骨浸潤の有無を評価するのに有効です。
可能であればCT検査を実施することが望ましいですが、困難な場合はX線検査を行います。
頭部あるいは口腔内のX線検査を実施することで腫瘍の伸展の程度を把握し、手術可能かを判断することが出来ます。
また、胸部X線検査で肺への転移の有無を確認することもあります。
転移部位は、領域リンパ節、肝臓、肺などについて報告があります。
リンパ節が通常サイズであっても転移が40%ほど認められるため、針生検などにより臨床ステージ分類を実施する必要があります。
ステージ | 原発腫瘍、リンパ節転移、遠隔転移 | 生存期間中央値 |
1 |
原発腫瘍の長径≦2cm |
17〜30ヶ月 |
2 |
2cm<原発腫瘍の長径≦4cm |
5〜29ヶ月 |
3 |
2cm<原発腫瘍の長径≦4cmでリンパ節転移あり、 もしくは原発腫瘍の長径>4cm |
4〜6ヶ月 |
4 |
肺やその他臓器への遠隔転移あり |
3ヶ月 |
ステージ1、2の転移がない場合には、外科摘出が第一選択の治療法です。
たとえ小さな病変であっても周囲の骨を含めて切除するため、切除する範囲によっては術後に外貌の変化や摂食障害が生じることがあります。
大きな腫瘤や上顎尾側での発生は、切除後縫合する皮膚が十分に確保出来ないと予測されます。
再手術や術後の術創裂開が頻回に起こるなど重度の合併症が発生する可能性があります。
外科治療は根本的な治療効果が得られる可能性がある治療法ですが、このような治療のデメリットについても十分に理解する必要があります。
口腔悪性黒色腫は転移率が高いため、全身療法は必須です。
しかし、現在まで有効な全身療法は見られず、主に抗がん剤を用いた化学療法が行われます。
はっきりとした根拠は報告されていませんが、手術の後に再発や転移を予防するために行います。
放射線治療は、「がんの縮小や大きくなる速度を遅くすること」、「病変部の出血や痛みを改善すること」を目的として行います。
外科手術が不適応の場合や、口内の痛みで生活の質が低下している場合などは、ステージ初期でも放射線療法が選択肢に挙げられます。
この治療法のメリットは、外科摘出のような侵襲性を伴わないこと、
デメリットは、治療の度に全身麻酔が必須になることです。
また当院で新しく始めた、メラノーマに有効な治療法である電気化学療法は、下記のページで詳しく解説しています。