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犬の乳腺腫瘍は、乳腺にできる腫瘍で未避妊のメスにできる腫瘍の中でもっとも多いとされています。
中〜高齢(7〜13歳)で発生が増加します。
プードル、チワワ、M・ダックスフント、シーズーに多く、初めての発情の前に避妊⼿術を⾏うことで、発⽣率が0.5%まで低下するとも⾔われています。
犬に発生する乳腺腫瘍は、猫の乳腺腫瘍とは異なりその半数が良性であるとされています。また、悪性のうち転移など高悪性度と言われるものはそのさらに半数とされています。
また小型犬と比較して、⼤型⽝では悪性腫瘍である割合 が増えるとされています。
犬では、初めての発情の前に避妊手術を行うと乳腺腫瘍の発生率が0.5%まで減少するとされています。その後発情を経験すればするほど、避妊手術による乳腺腫瘍の予防効果は減少していきます。4歳以上の避妊手術には、ホルモン反応性の乳腺腫瘍をのぞいて予防効果はないとされています。
犬の乳腺は通常左右で5対あります。脇に近いところから内股まで広い範囲で乳腺が存在しています。この部位に皮膚の下にしこりができると、まず乳腺腫瘍が疑われます。特に第4〜5乳腺での発生が多いです。また半数以上はしこりの数が1個ではなく複数個あり、それぞれが良性・悪性バラバラであることも珍しくありません。
診察室の中では、飼い主様の主訴と違う部位も注意深く触診を行い、しこりがないかを確認します。
もちろん犬の皮膚にできる腫瘍は、肥満細胞種や毛包上皮種など他にもあるため、見た目だけでなく可能な範囲で皮膚エコー検査や針の検査を行い確認をした方がいいと考えます。
また同時に脇や内股のリンパ節(腋窩・副腋窩リンパ節、鼠径リンパ節)をエコーで確認し、リンパ節の変化がないかも確認した方がいいと考えます。
乳腺腫瘍の確定診断(乳腺腫瘍かどうかや、良性・悪性の判断)は、組織構造で判断するため(針の検査はあくまで細胞を評価する検査)外科切除を行い、その切り取った組織を病理検査に出すことで行います。
ただ乳腺腫瘍が切除するまで確定診断が出ない腫瘍とは言っても、それまでの検査を的確に行い必要十分な手術が行えるよう確認をしっかり行うべきだと考えます。
臨床ステージ | 腫瘍の大きさ(T) | 領域リンパ節転移(N) | 遠隔転移(M) |
Ⅰ | T1 : <3cm | N0 : 転移なし | M0 : 転移なし |
Ⅱ | T2 : 3~5cm | N0 : 転移なし | M0 : 転移なし |
Ⅲ | T3 : >5cm | N0 : 転移なし | M0 : 転移なし |
Ⅳ | 全てのT | N1 : 転移あり | M0 : 転移なし |
Ⅴ | 全てのT | 全てのN | M1 : 転移あり |
乳腺腫瘍の治療においては、外科治療である手術による切除が1番推奨される治療法です。
切除の仕方に関しては様々で、腫瘍のみの切除、腫瘍ができている乳房の切除、腫瘍ができている乳腺が分布している複数の乳房の切除、片側・両側の一括した乳腺の切除といった形で、様々な切除方法があります。
腫瘍の悪性度によっても、どの切除方法が適切かが分かれてくるので切除前に確定診断が難しい乳腺腫瘍では、どれが最適かというのははっきりとわからないことも少なくありません。
腫瘍の見え方、大きさ、経過などを総合的に判断し、必要十分な切除範囲となるように考えて、切除方法の提案を行います。
また両側合わせての切除を行う場合は、1回の手術で行うと皮膚が足りずに縫合ができないこともあります。その場合は、状況にもよりますが片側ずつ2週間〜4週間間隔を空けて2回に分けて手術を行うこともあります。
外科手術時のリンパ節の切除は、術前のエコー検査による判断やこれまでの経過、腫瘍の外観が悪性腫瘍を疑う場合に、乳腺と一緒に切除を行うことがあります。
リンパ節の切除を同時に行うことで、転移のリスクの有無を判断することができます。
また乳腺腫瘍の犬の20%は卵巣の異常があったという報告もあり、今後の卵巣・子宮の病気にかかるリスク(特に子宮蓄膿症は死亡のリスクもある)の低下を目的に同時の実施が勧められます。
現在、犬の乳腺腫瘍に有効な化学療法はない。つまり大きな腫瘍の塊に対して、薬だけでこれを小さくすることは基本的にできないと考えた方がいいと思います。
乳腺腫瘍に対する化学療法は、悪性度が高く転移のリスクが高い場合化学療法を手術の後に使うことで、転移のリスクが下げられる可能性を期待して行うものです。
使う薬の種類としては、カルボプラチン、シクロフォスファミド、NSAIDs、トセラニブなどがあります。
治療成績はもちろんですが、それぞれが異なったやり方で投与します。また共通する副作用や特徴的な副作用があったりするなど、それぞれの治療がご家族に受け入れられるかどうかも含めて、治療法の選択をするべきだと考えています。
リンパ節転移が起こっている場合は、平均生存期間は8〜17ヶ月です。転移のない場合は、19〜24ヶ月以上とされています。
ステージⅢ以下の場合は、早期の治療介入により長生きできる可能性が期待できます。