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犬と猫の癌 | 動物の腫瘍の進行速度はどのくらい?その見極め方は? | 画像あり|ESSE動物病院|吹田市(北千里駅)・箕面市・豊中市の動物病院

犬と猫の癌 | 動物の腫瘍の進行速度はどのくらい?その見極め方は? | 画像あり

大阪府吹田市・豊中市・箕面市の皆さん。こんにちは。ESSE動物病院の院長 福間です。

今日はよくいただく質問である、「腫瘍ってどれくらいで進行してくるんですか?」について考えていこうと思います。

たぶん、この質問の背景としては『進行の速度がわかれば、自分で検査・治療などのタイミングを判断できるのでは?』というお考えがあってなのかなと思います。

 

腫瘍ってどれくらいで進行するの?

この質問への答えとしては、『様々です』という答えになってしまいます。

なぜかというと腫瘍と一括りで言っても、良性腫瘍と悪性腫瘍では進行の有無や速度は全く違いますし、またその種類の中でも進行速度は違ってくるものがあります。

なので、一概に腫瘍の進行速度はこう!という言い切りは動物医療でもできないんです。

 

 

診断の目的・必要性

じゃあどうするのでしょう?

ここで『やっぱり診断は大事だよね』という話になると、私は思います。

というのも、診療の現場でよく聞くのが「先生。診断をつけてもこの年だから治療ということにはならんでしょ。だから診断のための検査は必要ないんじゃないですか?」という話です。

このご家族の考え方を否定するつもりはありません。考え方や価値観は人それぞれですし、そこが違えば何がベストな選択肢かは自ずと変わってくると考えるからです。

[※一応付け加えておくと、私の価値観としては年だから治療しないという考え方はしません。(病気があって手術のリスクが高い場合はよく相談しますが、年だからという理由だけで治療を断念したりはしないということです。)]

ここでは「診断の目的=治療方法を探す」という感じだと思うのですが、私はこれは違うんじゃないかなと思います。私は、診断の目的は今後の予測を立て方針を立てること(治療も含む)だと考えています。

つまり、腫瘍の正体が分かれば過去のデータと照らし合わせることができます。今後どのような悪さをその腫瘍が起こしうるのか、そしてそれに対してどう治療や対処をしていくのか。これを考えるために、私は診断が必要だと考えます。

そして、この“今後の予測”に腫瘍の進行速度が含まれるため、最初の『やっぱり診断は大事だよね』という話に行き着くわけです。

POINT:診断の目的は今後の予測を立て方針を立てること(治療も含む)

 

 

 

診断に必要な検査って何があるの?

タイトルから少しだけ脱線はしますが、診断を考える上で大切なことである『どうやったら診断が出るの?』を考えていこうと思います。

腫瘍の診断を出すための検査は、いくつかあります。今からあげるものがその全てではありませんが、知っておいた方がいい代表的なものをいくつかあげていきます。

 

FNA(穿刺吸引法)

これは、皮膚表面や内臓器などの針が届く位置にある腫瘍に行う検査法です。針で腫瘍を刺し、その一部の細胞を取り顕微鏡で細胞を確認することでその腫瘍が何なのか“類推”する検査です。

長所は、大人しい動物では麻酔なしで様々なところの腫瘍に対して検査が行えるところです。(私自身も、鎮静なしで肝臓や腎臓に対して行うことも少なくないですし、出血などの問題が起きたことはありません。)

短所は、一部の細胞しか取れないので余り多くの情報を得られないこともあることです。

 

この検査である程度の診断が出せる腫瘍は、悪性リンパ腫、肥満細胞種、メラノーマなどの腫瘍があります。

 

 

 

 

Tru-cut生検

これは、特殊な装置を使いしこりの一部を取ってくる検査方法です。形状は太い針で、これをしこりに刺します。この針の一部に溝があり、この溝に入り込んだ組織を切り取ってきます

長所は、取れる組織こそ少ないですが細胞の塊である“組織”を取れる分、得られる情報量は多いです。また、麻酔をかけて行うことも多いですが、部位によっては麻酔なしでも可能です。

短所は、これ自体ちょっと高い機械なので費用がかかります。またこれは私の個人的なところなのですが、費用の割に得られる情報が少ないというか何かどっちつかずの検査だと感じています。私個人としては今回説明する検査方法の中では、1番実施することが少ないです。

これがTru-cut針です。Cの溝に組織が入り込み、その組織を切り取ることができます。

 

 

 

 

パンチ生検、楔状生検

生検トレパンという円形のメスのようなものを使って組織を切り取り検査することをパンチ生検と言い、メスで組織を楔形状に切り取り検査することを楔状生検と言います。

長所は、比較的しっかりとした組織の量を取れるので診断のための情報量は多めということと、皮膚など検査をする場所によって局所麻酔(私たちが親知らずを抜くときに行う、その部分だけ感覚をシャットアウトする麻酔方法)だけで検査が行うことができることです。あと生検トレパンもメスも、ひとつ前のTru-cut針より安いので検査費用も抑えることができます。

短所は、口の中などの場所によっては全身麻酔が必要だということと、小さく取るといっても1〜3針ほど縫う必要があることです。

生検トレパンの写真。事務用品の穴あけパンチのように、組織をくり抜くことができます。

 

これで診断できるものは、皮膚表面や皮膚のすぐ下にある腫瘍(皮脂腺種、皮膚型リンパ腫、軟部組織肉腫など)や口の中にできる腫瘍(猫の扁平上皮癌など)です。

 

 

 

切除生検(部分切除もしくは完全切除)

これは腫瘍の一部、もしくは全部を切除しその組織を検査する方法です。完全切除だとやっていることは普通の手術と変わりないですが、それをする目的に『組織検査』が含まれるかどうかの違いなのかなと考えています。

長所は、完全切除の場合は治療も兼ねることができること、組織を完全に取ることができるので診断のための情報量は1番多いということです。

短所は、時としてお腹を開けたりすることもあるので1番大掛かりで動物への負担も必然的に増えてくるということ、費用も同様にかかってくるということです。

 

これでは、大部分の腫瘍が診断できます。例えば、血管肉腫、低悪精度リンパ腫、乳腺腫瘍、肝臓腫瘍などです。

 

 

 

 

ここにあげたもの以外にもまだまだ腫瘍の診断に使う検査方法はありますが、検査方法を選ぶ上で私自身大切にしていることは

自分が疑っている病気を診断(もしくは否定)するために「診断の精度、かかる時間、動物への負担、費用」の全てが最大値となるような検査方法を選ぶ

です。

 

 

ではこれら診断を行った後に、どのようなことができるようになるのでしょうか?

 

 

 

腫瘍の予測をたて、方針を立てるとは?

実際に検査を行い、確定診断(もしくは仮診断)が出た時どのようなことができる可能性があるのか、例をあげて説明していこうと思います。

 

 

例① )肛門近くの腫瘍:肛門周囲腺腫だった場合

犬の患者さんで、肛門の近くの皮膚にしこりがあるという主訴で来院されました。診察で、1cmほどの赤く盛りあがる皮膚のしこりを確認しました。

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FNA検査を実施し、細胞診検査で『肛門周囲腺腫』を疑い仮診断としました。

《肛門周囲腺腫の特徴:多くの場合が肛門周囲の皮膚にできる良性腫瘍。大きさの変化は少なく、転移もしないが、時に腫瘍の表面から出血をすることがある。多くが未去勢オスで、精巣からのホルモンに反応して腫瘍ができている。去勢手術を行うことで、自然に消えて無くなることが多い。》

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肛門周りの手術は、傷口が汚れやすいことから手術部位の感染リスクが高めなので安易にメスを入れたくない。

このような事情と腫瘍の特徴を踏まえて、去勢手術と腫瘍のパンチ生検を行った。

理由)去勢手術 ➡︎ 肛門周囲腺腫であれば、直接の切除をしなくても去勢手術のみで消失することが期待できるから。

腫瘍のパンチ生検 ➡︎ 傷が最小限となるパンチ生検で確定診断を出しておいて、万が一腫瘍が消失しなかった時のプランBを考える情報とするため。

 

 

例② )お腹の皮膚腫瘍:乳腺癌だった場合

猫の患者さんで、お腹の皮膚にしこりがありそこから出血しているという主訴で来院されました。診察で、4cmほどの皮膚のしこりとそこからの出血を確認しました。

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FNA検査を実施し、細胞診検査で上皮性腫瘍を疑い、『猫の乳腺腫瘍』と仮診断としました。

《猫の乳腺腫瘍の特徴:その9割が乳腺癌であり悪性腫瘍。小さいものでは早期の摘出と片側乳腺の全摘出手術で完治の見込みもあるが、2cmを超えた乳腺腫瘍に関しては転移の可能性も高く、予後はよくない。肺への転移を起こしている場合、胸水が溜まり呼吸困難になることも。》

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レントゲン検査などで肺などへの転移は確認できなかった。CT検査後、完治の可能性を上げるため、2回に分けて片側ずつ乳腺を切除し両側乳腺の全摘出手術を提案した。

理由)CT検査 ➡︎ 肺や肝臓などその他臓器への転移の有無を確認するため。転移がなければ、腫瘍の大元を取り切ることで完治の可能性があるから。

両側乳腺の全摘出 ➡︎ 腫瘍細胞をなるべく残さずに取ることができる可能性が1番高い選択肢だから。

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オーナーが、大きな傷になる手術はしたくないと言われたため、皮膚のしこり単独の切除を実施。病理検査の結果は、『乳腺癌』。

理由)皮膚のしこり単独の切除 ➡︎ 自壊した腫瘍は、出血や感染など全身への悪影響があるため、完治の可能性がなくても切除する価値があるため。

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1ヶ月毎にレントゲン検査・エコー検査を実施。2ヶ月後に肺転移と胸水を確認。胸水を抜いて、「分子標的薬」を処方。その後、レントゲンで肺野の改善が見られた。

理由)定期的な検査 ➡︎ 乳腺癌の不十分な切除では、術後に転移が顕在化することも少なくなく、定期的な確認が必要だから。

胸水を抜いた ➡︎ 腫瘍があることで胸水はまた溜まる可能性はあるが、胸水があることで肺が広がらず動物は“今”苦しい思いをしているから。

分子標的薬 ➡︎ 割合としては決して多くはないが、乳腺癌の肺転移に対して分子標的薬を使うことで、転移した腫瘍の縮小など状況の改善が起こる可能性があるため。

 

 

このように腫瘍の特徴を知れば、今後腫瘍がどのような悪さをするのかということから、「ただ手術する」ではなくどうすれば最小限のリスクで最大限の治療効果が出せるのかを知ることができます。

 

 

 

まとめ 〜腫瘍の進行速度という切り口から〜

今回は、腫瘍の進行速度という切り口から腫瘍科における検査のやり方やその種類を、そしてその検査による診断から腫瘍科医が何をポイントにどう考えて治療などを提案しているのか、その一例をあげさせていただきました。

もちろん実際の臨床現場はさらに様々な要素が絡み、もっと複雑な状況であることも少なくないです。ただ、その中でも『最適解を出す』という私たちの仕事は変わらないので、いつも飼い主様と一緒に頭を抱えて悩んでいます。(^_^);

この記事で、臨床の獣医師は何も考えてなさそうに見えて実はめちゃくちゃ考えている(のかも?)ということが伝わればいいなと思っています。(笑

最後まで読んでいただきありがとうございます!

 

 

ESSE動物病院 院長 福間

大阪府吹田市青山台2−1−15(北千里駅から徒歩8分)

駐車場は10台以上あります。(豊中市、箕面市、茨木市、摂津市からも車で来院しやすいです)

皮膚科(アレルギー、アトピーなど)、腫瘍科(がん)、循環器科(心臓病、腎臓病)、外科手術(麻酔管理と痛みの管理をしっかり行います)を得意としています

健康診断、予防接種、フィラリア・ノミダニ予防、避妊・去勢手術も行います。ご相談ください

 

院長 福間 康洋
院長 福間 康洋
記事監修
院長 福間 康洋(フクマ ヤスヒロ)
  • 獣医腫瘍科認定医Ⅱ種(吹田市で1人、大阪府で22人[2021年1月時点])
  • 獣医教育・先端技術研究所 腹部・心臓超音波研修 修了
  • 日本獣医皮膚科学会所属
  • 日本獣医がん学会所属
  • 日本獣医循環器学会所属
  • 日本獣医腎泌尿器学会所属
  • 2015年:鳥取大学獣医学科卒業
  • 2018年:犬とねこの皮膚科 研修生
  • 2018~19年:ネオベッツVRセンター 研修生(内6ヶ月間)
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