ブログ
Blog
ブログ
Blog
大阪府吹田市・豊中市・箕面市の皆さん。こんにちは。
院長の福間です。
前回は腫瘍の認定医試験に出てきた病気について書いていくと言っていましたが、
冬のイベントなりでなんだかんだ時間がなく止まってしまっていました。ごめんなさい。
そして今回は冬のイベントの時にセミナーをした「認知機能不全症候群」について書きたいので、腫瘍の話はまた飛ばさせてもらいます。ごめんなさい。
さて。
では今回は犬の「認知機能不全症候群(CDS)」について書いていこうと思います。
これはよく老化、だったり年のせいというふうに捉えられることもあるので、
まず
「こんな病気があるんだ!」
というご家族が知っておくことがとても重要な内容になっています。
それと今回は、この記事の内容を説明する動画も作ってみました。
CDSは、脳の大きさや質量の低下、脳血流量の低下、神経細胞数の減少、神経伝達物質の減少や機能低下が起こる病気で、
脳の認知機能(※)が徐々に低下していき、その結果起こる様々な行動障害を起こす犬猫の症候群をいいます。
※五感(見る、聴く、触る、嗅ぐ、味わう)を介して外部から得た情報をもとに、物事の現状を認識したり、感情などを表現したり、記憶する機能の概念。
。。。
難しいですね!神経とか血流とか!
要するに、
脳の働きが低下するんだ。単なる老化じゃないんだ。
ということを知ってもらえれば十分です。
次に認知機能不全症候群(CDS)の症状を説明します。
やはりこれを知らないと、気づくことはとても難しくなります。
認知機能不全症候群(CDS)の症状は、
DISHAAの徴候と言われ
D:Disorientation(見当識障害)
I:Interaction Changes(相互反応の変化)
S:Sleep and Awake Cycle Changes(睡眠・覚醒サイクルの変化)
H:House Soiling(不適切な排泄)
A:Activity Changes(活動性の変化)
A:Anxiety(不安)
の6つにカテゴライズされて知られています。
見当識というのは、簡単にいうと自分が置かれている状況を認識することをいいます。
見当識障害が起こることで、不安行動も助長されると考えています。
例)外に出るときに内開きの門なので一歩下がって待っていたが、最近は門の近くで待っている。
視覚刺激などへ反応しなくなる。
これはコミュニケーションの変化をいいます。
若い時は何を考えているか表情や仕草から意外にわかるものだと思います。それが低下したり、最終的には飼い主の認識もできなくなることもあります。
例)最近は行動に意図を感じず、無目的に歩いているように感じる。
怒りっぽくなる。
これは一回の睡眠時間が短くなったり、睡眠のサイクルが変化することで起こる症状です。
そしてこれは難しいことに、関節炎や皮膚の痒み、耳の異常などでも助長されることもあり、夜泣き=認知機能不全症候群(CDS)で片付かないこともあります。
例)夜間の徘徊、夜泣き
例)トイレの失敗や粗相です。
例)見送りをいつもしていたのに、最近はしなくなった。
例)たまに怯えた様子で隠れている。
こんな感じの症状が認知機能不全症候群(CDS)の症状だと認識してもらえたらいいかと思います。
一つでも心あたりがあれば、すぐに後で話す治療や予防を検討いただくことをお勧めします。
では、実際に認知機能不全症候群(CDS)の犬はどの程度いるのでしょうか?
これに関してはいくつかの報告があり、
8歳以上で14%の犬が発症しているんじゃないか、とか。
11~12歳で28%、15~16歳で68%の犬が1つ以上の認知機能低下を示していた、とか。
意外に多いな、というのが私の印象です。
なのでこのような数字からも、後に話す予防の話を高齢になったら始めるのも一つかと考えています。
たいて予防と治療の話を書くときは治療から先に書くことが多いのですが、
今回は予防から書かせていただきます。
というのも、より早期に開始することが多いのが予防であり、そして認知機能不全症候群(CDS)の管理を考えたときにやはり予防が大事という話になるからです。
認知機能不全症候群(CDS)にはストレスが悪化の原因にもなります。
ですので、なるべくストレスが少なくなるように以下のような環境修正を行なった方がいいと言えます。
・トイレを行きやすくする
・滑らない工夫を
・家具の移動を避ける
・障害物の少ない環境を
認知機能不全症候群(CDS)の進行抑制にストレスの減少と適度な外的な刺激の増加は効果的です。
心身ともに良い刺激を与えられるように、以下の内容を日々の生活に取り入れていただくといいと思います。
・適度な運動
・適度なトレーニング
・叱らない
・頻繁にトイレに連れていく
認知機能不全症候群(CDS)の進行抑制や予防に食事はとても重要です。
認知機能不全症候群(CDS)の悪化因子の一つがフリーラジカルと言われる酸化物質で、これに対して抗酸化成分やω3脂肪酸を多く含む食事やサプリメントが効果的です。
実際に脳の機能改善の報告もあったりするので、試す価値はあると思います。
認知機能不全症候群(CDS)への根本的な治療はとても難しいです。
というのも、脳の質量低下などどうしようもない変化が起こってしまっているからです。
ですので、治療は症状の緩和とそれに伴う犬やご家族の生活の質の改善を目指して行います。
このお薬は、神経伝達物質のアセチルコリンの量を増加させる作用があり、それによる脳機能の改善が期待できます。
飲み薬で副作用も少なく、臨床症状の改善の報告もあるお薬です。
これはサプリメントですが、有効成分がGABA4に働き抗不安作用を期待できます。
頓服的な使用から、常服薬としても使うことができます。
認知機能不全症候群(CDS)による不安行動に対しての対症治療として使いますが、
他にも花火や雷への恐怖行動や、分離不安に対しても使用することがあります。
これはお薬のグループの名称で、具体的な薬剤としてはフルオキセチンやクロミプラミンがあります。
脳のセロトニンの働きを強めることで抗不安効果を示します。
先ほどのジルケーンよりも効果は高く治療による変化を期待できますが、
飲み続ける必要があり効果の安定までにも時間がかかることや、休薬もゆっくり行う必要があるなど
扱いに少しクセがあるお薬でもあります。
このお薬は鎮静作用のある抗不安薬で、よく「睡眠薬」として使用します。
作用機序はジルケーンと似ていて、GABAに作用ししっかりとした鎮静効果、睡眠効果があります。
頓服的な使用が可能なお薬で、量の調整で睡眠時間を調整したりすることもあります。
実際に認知機能不全症候群(CDS)の予防や治療のあり方は、私は上記の図のように考えています。
高齢期に入ったり、「ん?」と違和感を感じる状態を軽度と考え、予防的な介入をお勧めします。
1つ以上の認知機能不全症候群(CDS)の症状が出てきた場合は、中等度と考えお薬なども選択肢にします。
認知機能不全症候群(CDS)の症状が複数出てきて、かつ動物やご家族の生活の質が低下している場合は、
重度というふうに捉えて複数の治療方法を持って積極的な介入を提案します。
あくまで一つのやり方と考えていただければ助かります。
どうでしたか?
こういった記事を熱心に見ていただいている方には、知っているよという情報も多かったかもしれませんが、
一つでも新しい話があれば嬉しいです。
私からのTake Home Messageとしては、
「認知機能不全症候群(CDS)自体を認知して、予防する」
です。
よろしくお願いします。
————————————–
ESSE動物病院 院長 福間
大阪府吹田市青山台2−1−15(北千里駅から徒歩8分)
駐車場は10台以上あります。(豊中市、箕面市、茨木市、摂津市からも車で来院しやすいです)
皮膚科(アレルギー、アトピーなど)、腫瘍科(がん)、循環器科(心臓病、腎臓病)、外科手術(麻酔管理と痛みの管理をしっかり行います)を得意としています
健康診断、予防接種、フィラリア・ノミダニ予防、避妊・去勢手術も行います。ご相談ください