大阪府吹田市・豊中市・箕面市の皆さん。こんにちは。ESSE動物病院の院長 福間です。
今回も腫瘍科認定医試験勉強の一環としての投稿です。今回は「リンパ腫」について書いていきます。
内容は、
・リンパ腫とは?
・リンパ腫の検査(一般検査)
・リンパ腫の診断(細胞診・組織検査、リンパ球クローナリティー検査)
・犬のリンパ腫の種類と説明
・猫のリンパ腫の種類と説明
について書いていきます。
リンパ腫とは?
リンパ腫とは、血液の中の白血球の一種である「リンパ球」が腫瘍化したものです。
リンパ系組織(リンパ節、脾臓、胸腺など)に発生しやすいものの、身体中のどの部位にも発生する可能性のある腫瘍です。
リンパ球と一括りに言っても、T細胞型、B細胞型などさまざまなタイプのリンパ球が存在し、その元となるリンパ球の種類によっても悪性度などが異なります。
実際、「高グレード」と呼ばれる悪性度の高いものと「低グレード」と呼ばれる悪性度の低いものが存在し、この悪性度によっても進行の速度や治療薬の選択が変わってきます。
また猫のみですが、FeLV(猫白血病ウイルス)感染による縦隔型リンパ腫の発生増加など、一部のリンパ腫ではウイルス感染による関係性も報告されています。
リンパ腫の検査(一般検査)
リンパ腫への検査には以下のようなものがあります。
- 身体検査:体を触り全身のリンパ節が腫れていないかを確認します。また、聴診で胸水が溜まっていないか呼吸音に問題がないかなど、全身の状態を確認します。
- 画像検査:レントゲン検査では、肺の異常、胸の中のリンパ節の腫れがないか、肝臓や脾臓などその他の臓器の異常がないかを確認できます。超音波検査では、お腹の中のリンパ節の異常や、腸・胃など消化管の異常がないかを確認できます。
- 血液検査:腫瘍随伴症候群(腫瘍によって起こる様々な異常。例えば、高カルシウム血症や低血糖など)がないか、肝臓・腎臓などの臓器の基礎疾患がないかを確認できます。また、血液中に腫瘍性リンパ球が出ている時も血液検査で確認できます。
- 骨髄検査:リンパ腫が骨髄に浸潤しているかを確認することができます。
リンパ腫の診断
細胞診検査で見た、がん化したリンパ球です。
リンパ腫の診断のための検査には下記のようなものがあります。
- 細胞診検査:細い採血用の針で、組織を刺して細胞をとりそれらの細胞を顕微鏡で確認することで行う検査です。典型的な悪性度の高い高グレードのリンパ腫では、細胞診検査でも腫瘍性リンパ球を多数確認することで確定診断を行うことができます。
- 組織検査:異常を疑う組織を全部(もしくは一部)をとり、それを調べる検査です。悪性度の低い低グレードのリンパ腫は、細胞診検査だけでは診断できず組織検査が必要なこともあります。多くの場合全身麻酔が必要なため、検査の実施が妥当かを見極める必要があります。
- リンパ球クローナリティー検査:リンパ球のクローン性を調べる検査です。クローン性があれば、クローン性があるということは、全く同じ特徴を持った細胞が不自然に増えているということなので、この場合リンパ腫であることを疑います。また、T細胞型かB細胞型かどちらのリンパ腫かも知ることができます。
通常は、細胞診検査か組織検査の内適切な検査を行います。そして、状況により診断の補助手段として、リンパ球クローナリティー検査を行います。
犬のリンパ腫の種類と説明
一言に「リンパ腫」と言っても、そのできる部位によってもどんな症状が出てくるかは変わってきます。
ここでは犬のリンパ腫の「できる部位」における分類を使って、いろんなリンパ腫を紹介していきます。
- 多中心型リンパ腫 : 全身のリンパ節で腫瘍性のリンパ球が増殖するリンパ腫です。体の表面にあるリンパ節(顎や肩、内股、膝裏など)が腫れてくることで気づきます。進行してくると、肝臓や脾臓、骨髄内にも腫瘍性リンパ球が浸潤していきます。症状は、食欲が減る、体重が減る、元気がない、嘔吐・下痢、痩せてくるなどいろんな病気で見られるような症状で出てくることが多いです。また、腫瘍随伴症候群(腫瘍になることで発生することのある病気の集まり)として、免疫介在性溶血性貧血、高Ca血症、低血糖などがあります。これらの病気の際も、リンパ腫が隠れていないか検討する必要があることがあります。
- 縦隔型リンパ腫 : 胸骨リンパ節や胸腺など、胸の中に存在するリンパ組織に腫瘍性のリンパ球が増殖するリンパ腫です。腫瘍が肺を圧迫したり胸水が貯まることで、呼吸が早くなったり息苦しそうにすることが多いです。また腫瘍随伴症候群として、高Ca血症が見られることが多く高Ca血症による多飲多尿(おしっこをたくさんして水をたくさん飲む症状)から発見されることもあります。
- 消化器型リンパ腫 : 胃や腸などの消化管やその周りのリンパ節で腫瘍性リンパ球が増殖するリンパ腫です。嘔吐・下痢、体重が減る、食欲が減る・無くなる、低タンパク血症などの症状が見られることが多いです。また似ている病気として、IBD(炎症性腸疾患)があり時に低グレードの消化管型リンパ腫と見分けるのがとても難しいこともあります。
- 皮膚型リンパ腫 : 皮膚で腫瘍性のリンパ球が増殖するリンパ腫です。上皮向性という皮膚の浅いところで増えるタイプと非上皮向性というそうでないタイプがあります。上皮向性型は、紅斑期(フケや赤み、脱毛などが見られる時期)と局面期(ジュクジュクとした盛り上がるような皮膚症状ができる時期)と腫瘍期(しこりが出てくる時期)の3つのステージがあり、様々な皮膚の異常の見え方をします。
- その他のリンパ腫 : リンパ腫は様々な場所に発生します。上記以外のもので、眼球、脊髄神経、骨、膀胱、心臓、鼻の穴などにできることがあります。
猫のリンパ腫の種類と説明
猫のリンパ腫も犬と同じようにいくつか種類がありますが、犬と違いできやすいリンパ腫が少し違います。
また、猫はFeLV(猫白血病ウイルス)感染によってリンパ腫になるリスクも変わるので、その点にも触れて紹介していきます。
- 消化器型リンパ腫 : 胃や腸などの消化管やその周りのリンパ節で腫瘍性リンパ球が増殖するリンパ腫です。嘔吐・下痢、体重が減る、食欲が減る・無くなる、低タンパク血症などの症状が見られることが多いです。猫に最も多いリンパ腫で、FeLV非感染の老齢の猫に多いです。
- 縦隔型リンパ腫 : 胸骨リンパ節や胸腺など、胸の中に存在するリンパ組織に腫瘍性のリンパ球が増殖するリンパ腫です。腫瘍が肺を圧迫したり胸水が貯まることで、呼吸が早くなったり息苦しそうにすることが多いです。FeLV感染のある若い猫に多く発生します。
- 多中心型リンパ腫 : 全身のリンパ節で腫瘍性のリンパ球が増殖するリンパ腫です。犬では多いですが、猫では珍しいタイプです。
- 腎リンパ腫 : 腎臓で腫瘍性リンパ球が増殖するリンパ腫です。腎臓機能の低下が見られることもあります。
- 鼻腔リンパ腫 : 鼻の穴の粘膜で腫瘍性リンパ球が増殖するリンパ腫です。FeLV非感染の老齢の猫で発生します。
まとめ
今回は、リンパ腫の診断や種類などを書いていきました。一言に「リンパ腫」と言ってもたくさんの種類があり、それにより治療や病気の予測が変わってきます。
リンパ腫に関しての情報も増えていき、治療法を選ぶことができるようになってきています。
医学の進歩とともに、リンパ腫という病気を適切に理解し、必要で十分な検査で診断し治療方法を選択するということが、今まで以上に重要になってきています。
ESSE動物病院 院長 福間
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