大阪府吹田市・豊中市・箕面市の皆さん。こんにちは。ESSE動物病院の院長 福間です。
今回から、獣医腫瘍認定医Ⅰ種の試験のため勉強している内容を私自身の覚書の意味も含めて書いていこうと思います。
よろしくお願いします。
今回の内容は、
・犬の乳腺腫瘍
・猫の乳腺腫瘍
・肥満細胞種とは?
・犬の肥満細胞腫
・猫の肥満細胞腫
について書いていこうと思います。
犬の乳腺腫瘍

犬の乳腺腫瘍は、避妊手術をしていないメスで比較的多く見られる腫瘍であり、雌犬の全腫瘍中52%を占めるとも言われています。
良性と悪性の割合は、50:50であるとされています。
発症年齢
中央値(報告の中で1番下と上の年齢の中間年齢)は、10〜11才です。
好発犬種
プードル、イングリッシュ・スパニエル、イングリッシュ・セッター、ダックスフンドなどが、発症する可能性が高いです。
逆にボクサーやチワワは、発生率が低いとされています。
また、大型犬のほうが小型犬よりも悪性腫瘍の発生率が高いという報告があり、大型犬の多くで乳腺腫瘍が悪性である確率は58%だとする報告もあります。
対して小型犬は25%という報告があります。
特徴
- 腫瘍の発生率は避妊時期と関連があるとされており、初回発情前の手術で0.5%、初回発情後の手術で8%、発情2回目以降の手術で26%に発生率が減少すると言われています。
- 悪性であれば、肺やリンパ節、肝臓などに転移しやすいとされています。
- 炎症性乳癌という、急激進行していく悪性度の高いものも存在します。
猫の乳腺腫瘍

猫において乳腺腫瘍は、3番目に多い腫瘍であり雌猫の全腫瘍中17%を占めると言われています。
良性と悪性の割合は、15:85という報告もあり犬よりも悪性である割合がとても高いです。
発症年齢
中央値は10〜12才です。
好発猫種
シャム猫やドメスティック・ショートヘアで多いとされ、特にシャム猫は他の猫種の2倍の発生リスクがあるとされています。
特徴
- 6ヶ月齢以下で避妊手術をすると91%、1歳齢以下で手術をすると86%というように、避妊手術を早期にしたほうが避妊手術をしていない猫よりも乳腺腫瘍の発生リスクが下がるとされています。
- 悪性であれば、肺やリンパ節、肝臓などに転移しやすいとされています。
- 乳腺腫瘍の大きさがとても重要で、生存期間中央値(100頭の猫がいてそのうちちょうど50頭目がなくなるまでの期間、平均寿命のようなもの)は腫瘍が2cm以下のもので3年以上、2〜3cmで15〜24ヶ月、3cm以上で4〜12ヶ月というように変化してくる。2cm以下で外科手術を行うことがとても重要です。
- 犬よりも大きな手術が必要な場合が多く、両側乳腺全摘出手術を行った場合は生存期間中央値が917日、片側乳腺全摘出手術を行った場合は348日という報告があります。
肥満細胞腫とは?

肥満細胞腫とは、肥満細胞が腫瘍化したもので全身のあらゆる場所に発生する可能性があります。
ちなみに、肥満細胞とは決して体型の肥満とは関係がなく、ヒスタミンなどの物質を細胞内に蓄えており細胞質が広く見えるためついた名前です。
特徴
- 特徴的な細胞であり、FNA(針で細胞の一部を取ってくる検査で、多くの場合麻酔が必要なくよく行われる検査)でも診断が可能であることが多いです。
- リンパ節や肝臓・脾臓への転移は見られるが、肺への転移は少ない腫瘍です。
- 腫瘍随伴症候群(腫瘍に伴って起こる異常)として、食欲や元気の低下を起こし時に嘔吐などの原因となる「高ヒスタミン血症」や、触るなどの刺激により一時的に赤く腫れる「ダリエ徴候」が見られます。
犬の肥満細胞腫

犬の肥満細胞腫は、皮膚や皮下によくできます。
特徴
- 皮膚の肥満細胞腫には3段階と2段階のグレード分類があり、細胞の変化が強いもの、リンパ節に転移しているもの、多発しているものが、より悪性度が高いとされています。
- パグやゴールデンは、肥満細胞腫の好発犬種で肥満細胞腫が多発することも珍しくありませんが、この2犬種に関しては多発しても悪性度が高くないことも少なくありません。
猫の肥満細胞腫

猫の肥満細胞腫は、皮膚、腸、脾臓・肝臓に発生する可能性があり、できる部位によって悪性度など腫瘍の進行の仕方が違います。
特徴
- 皮膚の肥満細胞腫はシャム猫に多く、外科切除により根治可能な場合が多いです。
- 腸の肥満細胞腫は、腸の腫瘍の中で3番目に多い腫瘍であり、嘔吐や食欲不信などのお腹の症状を示します。
- 脾臓の肥満細胞腫は、脾臓の腫瘍の中で1番多い腫瘍であり、食欲低下などはっきりとしない症状で来院される場合が多いです。脾臓のエコー検査とFNA(針で細胞の一部を取ってくる検査で、多くの場合麻酔が必要なくよく行われる検査)で診断されます。治療は脾臓の外科摘出で、完治するケースもあります。
- 脾臓の肥満細胞腫はまれに、皮膚に転移します。皮膚にしこりがたくさんできて、それらが肥満細胞腫であった場合は、脾臓に肥満細胞腫ができている可能性を考えます。
まとめ
今回は、犬と猫の乳腺腫瘍と肥満細胞腫について書いていきました。
同じ腫瘍でも、犬と猫で腫瘍の特徴は全然違ったりします。しかしその違いは、腫瘍の診断・治療を行う上で重要になることもあるので、各動物毎のきちんとした情報を入れておくことが大切だと考えています。
ESSE動物病院 院長 福間
大阪府吹田市青山台2−1−15(北千里駅から徒歩8分)
駐車場は10台以上あります。(豊中市、箕面市、茨木市、摂津市からも車で来院しやすいです)
皮膚科(アレルギー、アトピーなど)、腫瘍科(がん)、循環器科(心臓病、腎臓病)、外科手術(麻酔管理と痛みの管理をしっかり行います)を得意としています
健康診断、予防接種、フィラリア・ノミダニ予防、避妊・去勢手術も行います。ご相談ください