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大阪府吹田市・豊中市・箕面市の皆さん。こんにちは。
院長の福間です。
昨日、今日と大阪で「日本獣医がん学会」がありました。
私は、がん学会の会員であり認定医でもあり何より多くの情報が得られるので、今回も参加してきました。
今回のテーマは「がん終末期のケア」という内容で、今まで少し違った内容でした。
知識の反芻と、緩和ケアについて情報を伝えたいので、今回はこのテーマで書かせていただきます。
緩和ケアという言葉は比較的よく聞く言葉ではないでしょうか?
以前の記事でも取り上げたことのあるワードで、癌治療においてとても重要な考え方だと私自身強く思っています。
緩和ケアとは、「生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである。」
とWHOは定義しています。
つまり、
・対象が患者だけでなくその家族も
・達成すべき目標はQOLの向上
・身体的な痛みだけでなく、精神的、社会的、スピリチュアルな問題にも対応する
・早期に見出し的確に評価する
です。
よく緩和ケア=終末期ケアというふうに誤解されているケースが多いと思います。
この誤解があると、
緩和ケア ⇨ もう治療のすべがない ⇨ 医者に見限られた
という更なる誤解を招く恐れもあります。
誤解している人の根治治療(完全に治すことを目指す治療)と緩和ケアのイメージはおそらく下記のような形だと思います。
しかし、本当の意味での緩和ケアとは上記のような定義があるので、このような形になるはずです。
根治治療を行いながらも生じる苦痛はあるはずです。
ですので、最初は根治治療と緩和ケアを並行して行います。
緩和ケアは、治すことを諦めた後の治療ではなく、患者と家族のQOLを上げるために行うものだからです。
また、緩和ケアの重要性を示した有名な論文があります。
この論文は肺がん患者に、通常の緩和ケアとより早期からの積極的な緩和ケアを行ったグループとを比較した場合、
より早期から行ったグループの方が長生きしたという結果を報告しています。
これがその論文からの持ってきたグラフです。
赤い線が早期から積極的に緩和ケアを行ったグループで、もう一つのグラフよりも上にあります。これは上にある方が長生きしているという意味になります。
痛みによって食欲は落ちます。ストレスもかかりカロリーの消費も増えるでしょう。すると体重は早く落ちていき、いざ病状が悪くなった時に持ち堪える体力がもうなくなっているかもしれません。確かに、痛みを放置することで寿命が縮むというのはありうる話だと考えています。
早期からの緩和ケアが大事だということが、少しでも感じていただければ嬉しいです。
痛みの管理や患者のケア、がんの宣告といった難しいことが、がん治療には多いと思います。
そういった難しいものには、ガイドライン、ルールというものを作って、その難しさを軽減しようとします。
ただ今回の学会で演者の先生がおっしゃっていた
「ガイドラインのようなものがあればいいですが、病気が同じでも病状や基礎疾患、思想、社会的背景が異なり、そうなるとそれらをガイドラインなどでの枠にはめることは無理がある。泥臭いことかもしれないが、やはり医療者は患者とコミュニケーションをしっかりとり、それぞれにあった最良を考えなければならない」(こんな感じのことを言っていました。)
という言葉がまさにその通りだなと思いました。
日々診療をしていて思うのは、おんなじ病気だったとしても一人一人の抱えている不安や問題は本当にバラバラです。
病気を診るのではなく、患者を診るのが私たちの仕事なので、やはりその人が抱えているそれぞれの問題を探って治療をしないといけないんだな、改めて感じさせられました。
今回の学会で、「医師のありよう」という話もすごく印象に残っています。
重大な手術を行うかを決める場で、「このまま何もしないと癌が進行して数ヶ月後には亡くなってしまうかもしれませんが、手術をすることで完治する可能性もあります。手術をすることで麻酔中に急変するリスクが〇%あり、手術後の再発のリスクは〇%あります。さて、どうしますか?」
こんな聞かれ方をすると、ご家族はすごく困ってしまいます。
ご家族は医療の知識はないので、断片的な情報を受け取っても判断をすることはとても難しいからです。
そうではなく、「このまま何もしないと癌が進行して数ヶ月後には亡くなってしまうかもしれませんが、手術をすることで完治する可能性もありますので、私は手術をすることをお勧めします。手術をすることで麻酔中に急変するリスクが〇%あり、手術後の再発のリスクは〇%あります。絶対の安全はお約束できませんが、リスクを0を近づけられるよう手を尽くします。」
というように医師の意思を伝えないといけない。選択した責任を家族に押し付けるようなことはするな。という話でした。
正直にいうと今だに前者のような責任逃れの話をしてしまうこともあります。
ただ難しい状況であればあるほど、獣医師としてプロとしてきちんと治療の方向性を決めて(もちろんご家族としっかりとコミュニケーションをとったのち)、その決定の責任をご家族だけに背負わせないようにしなければいけないなと、強く思いました。
緩和ケアというものがそうであり、また今回の学会で話された多くの話題は、一概に決められずその場その場で答えが変わるものばかりでした。
ただ、複雑で答えのないものだからこそ、私にとっては最良の選択をする上で臨床家としてのやりがいも感じられるものです。
今回の学会では、そんな大事なことを多く学ばせていただきました。
ESSE動物病院 院長 福間
大阪府吹田市青山台2−1−15(北千里駅から徒歩8分)
駐車場は10台以上あります。(豊中市、箕面市、茨木市、摂津市からも車で来院しやすいです)
皮膚科(アレルギー、アトピーなど)、腫瘍科(がん)、循環器科(心臓病、腎臓病)、外科手術(麻酔管理と痛みの管理をしっかり行います)を得意としています
健康診断、予防接種、フィラリア・ノミダニ予防、避妊・去勢手術も行います。ご相談ください