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大阪府吹田市・豊中市・箕面市の皆さん。こんにちは。
前回は犬のアトピー性皮膚炎の診断について説明しました。
「アレルギー検査は、それだけでアトピー性皮膚炎を診断できるものではない」「他の疾患をきちんと確認する『除外診断』が大事である」
ということを書かせていただきました。
今回から犬のアトピー性皮膚炎の治療について書いていこうと思います。
まずはこの表をご覧ください。
これは私が診療でよく使うお薬を表にしたものです。この表にある薬を一つずつ説明していきます。
ステロイドは非常に優れた薬です。皮膚の痒みを抑え、炎症を抑え、ぶ厚くなった皮膚を薄くするなど、アトピー性皮膚炎の重症患者には使用を勧める場合も少なくないです。ただ世間一般の認識として「ステロイド=副作用が強い」があります。
私はステロイドを治療で使う場合は、この副作用についてしっかり話すようにしています。やはり飼い主さんが不安を感じたまま、我が子に薬を飲ませるのは難しいと考えるからです。
ステロイドの副作用には、飲み始めてすぐに認められる食欲の増加、飲水量の増加などがあります。これらは生活スタイルによっては問題になることもありますが、薬を止めたら治るので大きな問題になる副作用ではないと思います。
問題になるのは、長期間ステロイドを飲む事で起こる、肝障害、皮膚症状、ホルモン失調などの副作用です。ただこの副作用は、長期間飲んでいると起こりやすい副作用なので、「短期間きっちり使って皮膚を治したら、薬をきっちり減らしていきましょう。そうすれば副作用も問題にならない事が多いです。」とよく話しています。
抗ヒスタミン薬は古くから使われているお薬で皮膚に痒みを起こすヒスタミンという物質をブロックする働きがあります。
人の花粉症によく使われているお薬です。ただこのお薬、アトピー性皮膚炎への効果はさほど強くなく、これだけで治療がうまくいく例は少ないです。他のお薬と併用する事で他のお薬の量を減らす効果が期待できる、という程度だとわたしは考えています。
実際、副作用も少なく価格も安いので補助療法としては使いやすいお薬です。
シクロスポリン自体は免疫抑制薬です。つまり免疫(体を守る反応)を抑える薬です。
その働きは、Tリンパ球を抑制したり(「その1」でお話ししたⅠ型、Ⅱ型がある細胞です)、炎症に関わる細胞などを抑えたりする事で、炎症を抑える働きがあります。
このお薬の効果は、ステロイドと差がないという論文もあり、適切に使えばかなり使える薬だと思っています。
シクロスポリンはいくつか特徴があり、この特徴を把握する事が大事だと思います。
①即効性がない。
血液中の薬の濃度の安定に時間がかかるので、飲み始めてから2週間ほどで効き始めるイメージです。
②副作用は飲み続ければ改善する。
副作用は、嘔吐・下痢があります。大体2〜3割くらいで見られる副作用ですが、飲み始めてすぐに見られ、そのまま飲み続けると症状は緩和してくる事が多いです。なので、様子を見れる症状であれば飲み続けるのも一つのやり方だと思います。
③いろんな種類がある。
以前はカプセル剤だけで飲ませるのが難しい場合も多かったと思います。今は、液体や粉、おやつタイプなどいろいろあるので、その子にあうものを使えばワンちゃん自身や飼い主様の負担も少なくする事ができると思います。
下の図は痒みの発生経路を示しています。この図のうち、四角で囲った“IL-31”という物質が神経に作用すると、痒みの信号が脳に伝えられます。
アポキルの成分は、神経側のIL-31を受け取る部分を塞ぐ働きがあり、その結果痒み刺激が脳に伝わらなくなると考えられています。
簡単にいうと、アポキルは痒み止めだと考えていいと思います。(細かいところまで言うと「免疫抑制薬」と言う認識が正確だとは思いますが)
痒みを抑える効果は、シクロスポリンよりも強いと言われています。また即効性もあり、作用の効き始めはステロイドより早いという報告もあります。
副作用もないことはないのですが、通常のやり方で問題になることはほとんどないです。当院では、念の為半年〜1年に1回の血液検査で副作用が出ていないか確認することを推奨しています。
そんなすごくいい薬であるアポキルですが、新しい薬なので薬代は高めです。そこが一番大きな短所かもしれません。
サイトポイントは、ここまでの話の中で唯一の注射剤で、使い方も「月1回の注射」という他の薬とかなり違う薬です。
先ほどのアポキルの説明で示した、痒みを伝える物質である“IL-31”自体を中和することで痒みを抑える効果があります。
この薬自体は、日本で使われ出したのは2019年からでかなり新しい薬です。細かい使い方も段々わかってきていますがデータがまだ乏しいので、今回の内容の大部分は私見だとご理解ください。
効果を発揮するポイントは、今まで一番少なく二次的な変化(傷、皮膚が分厚くなる、など)がある症例では効きにくいと感じています。
これは物理的な変化自体が、神経を刺激しIL-31が関わらない流れで痒み刺激が脳まで伝わってしまい、サイトポイントの守備範囲を超えた痒みが起こるからでは、と考えています。
なのでサイトポイントの効果が期待できるのは「経過が長くない皮膚が比較的きれいな子」が一つであると考えています。
サイトポイントの副作用はほとんどないと考えていいと思います。
薬代は高めですが、うまく効いてくれれば薬を飲ませる大変さからも開放されるので、そうなるとすごく嬉しいですね。
ちなみに今までの薬の効く範囲のイメージは下の図のような感じです。
効果を及ぼす範囲が広い薬はいろんな痒みを止めますが、その分副作用も出やすいと考えていいかと思います。
外用薬の種類には、大きく分けると外用ステロイド剤と外用タクロリムス剤があります。外用ステロイド剤は皆さんよく聞く、“ステロイドの塗り薬”ですがこれにはいろんな種類があるのをご存知でしょうか?
外用ステロイド剤は、「ステロイドの強さ」と「基剤の形態」により様々なバリエーションがあります。
次にタクロリムス軟膏についてです。
これもステロイド外用薬と同様に、アトピーに効果があると言われています。タクロリムス軟膏の長所は、
逆に短所は、
があげられます。
私の外用薬の使い方としては、症状が悪化してきている状況(急性期)で、比較的作用の強い製剤を積極的に使用します。(私がよく使うのは、アンテベートやフルメタです)
その結果症状が落ち着いてきたら(維持期)、塗る回数を減らす、よりランクの低いものを使う、外用タクロリムス製剤を使う、保湿療法に切り替える、などをします。
こうすることで、治療効果は落とさずにステロイドの皮膚から吸収される量を抑え、またステロイド皮膚症になることを防ぐことができると考えています。
あと、外用薬を毛のある動物に塗るのって結構大変なので、必然的に塗りやすいところの皮膚炎や限られた部位の皮膚炎(例えば指の間など)に対して、使用することが多いです。(外用薬って意外と大変で、飼い主さんのQOL(生活の質)を時に下げちゃうので、そこの線引きも大事なのかなと思っています)
外用薬に関してもう一つ抑えておきたい点は、製剤のタイプがいくつかあることです。
製剤のタイプと簡単な特徴を書くと、
というふうに考えています。
外用薬は結局悪いところに塗れないと、効果がありません。なので、使いやすいものを選ぶことが治療効果を高めることにつながります。
これは、処方される側がどうこうできる話ではないかもしれませんが、もし相談できる先生なら「こんなタイプの外用薬ってないですか?」と聞いてみてもいいかもしれません。
※この写真は恐らく肉球を柔らかくする「尿素」などの保湿剤を塗っているシーンだと思います。
多くの方の興味がある分野だと思います。
ただ今回説明するのは、シャンプーの基礎知識や考え方です。テクニックも大事だとは思いますが、やはり基本的なところが抜けていると一挙一動まで細かく説明する必要があるからです。
シャンプーには、皮膚表面の不要な物を除去する(不要な物とは、皮脂、汗、アレルゲン、外用薬の残りなど)効果があります。
これがアトピー性皮膚炎の症例に期待するシャンプー療法の大きな効果だと思います。
アトピー性皮膚炎の皮膚は、表層まで神経が伸びていると考えており、皮脂や汗の刺激に対して反応しやすいので、これらを放置しておくことは痒みを助長させると考えられています。
次に、シャンプーには角質に水分を与えまた外用薬や保湿剤の浸透をよくする働きもあると考えています。
これも皮膚の水分が抜けやすく、皮膚自体が弱い傾向にあるアトピーの症例には必要な内容だと思います。
ではシャンプー療法にはデメリットは何もないのでしょうか?
もちろん答えは「NO !」です。
シャンプーにもデメリットはあり、これも理解しておくことが大事です。
アトピーの症例に対するシャンプーの悪い働きには「脱脂」と「浸軟(しんなん)」があります。
脱脂は、皮膚表面の脂を落とすことです。
浸軟は、角質が水分を含むことで軟らかくなることです。
皮膚のバリア機能が落ちているアトピーの症例には、この脱脂と浸軟はよくありません。より皮膚のバリア機能を下げてしまいます。
なのでアトピーの症例には、脱脂作用の弱いシャンプーを使ったり、必要以上お湯につかないようにした方がいいと思います
あとシャンプーの悪いところでいうと、『手間』だと思います。
頻度にもよりますが、ブラッシングして、濡らして、シャンプーして、乾かしてってすると、1時間くらいかかり大変ですよね。
なので、アトピー性皮膚炎の治療でシャンプー療法をすべきかと聞かれれば、「可能であれば」と話すことが多いです。
※ちなみにシャンプーの頻度に関しても、はっきりどれくらいがいいというのはわかっていなくて、私はアトピー性皮膚炎の症例には「週1〜隔週に1回」と話すことが多いです。(アトピー以外の場合は、薬用シャンプーの頻度はもっと多いです。)
いかがでしたか?
やはり今回のところでも、「使い方と使い所を見極める」というのはとても大事なところだと思います。
最近はこの記事のおかげか、皮膚科のセカンドオピニオンが少し増えてきているように感じます。
これからアトピー性皮膚炎の症状が悪化しやすい時期になってきます。毎年のこと、と諦める前に一度相談いただければ嬉しいです。
遠方の方は、LINEで相談だけでも乗らせていただいています。お気軽にご相談ください。(友達登録はトップページの下の方にバナーがあります)
ESSE動物病院 院長 福間
大阪府吹田市青山台2−1−15(北千里駅から徒歩8分)
駐車場は10台以上あります。(豊中市、箕面市、茨木市、摂津市からも車で来院しやすいです)
皮膚科(アレルギー、アトピーなど)、腫瘍科(がん)、循環器科(心臓病、腎臓病)、外科手術(麻酔管理と痛みの管理をしっかり行います)を得意としています
健康診断、予防接種、フィラリア・ノミダニ予防、避妊・去勢手術も行います。ご相談ください