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大阪府吹田市・豊中市・箕面市の皆さん。
桜が咲き、散っていく中で段々と気温が上がってきて過ごしやすい季節になってきました。
さて今回はこの時期に増えてくる病気の一つ、犬のアトピー性皮膚炎についてその原因と症状、診断、そして治療について説明しようと思います。
まずは犬のアトピー性皮膚炎の定義を確認していきます。
『犬のアトピー性皮膚炎とは、遺伝的な素因をもち、炎症と痒みを起こすアレルギー性皮膚疾患で、特徴的な臨床徴候と多くが環境アレルゲンへのIgE抗体を持っている。』と、教科書には定義として書いてあります。
これを一語一語理解していくことで、犬のアトピー性皮膚炎ってこんな病気なんだなとイメージを持ってもらえるようになると思います。
日本では柴犬、プードル、チワワ、フレンチ・ブルドッグ、シー・ズー、ダックスフンド、ヨーキー、ウエスティ、ゴールデン・レトリバーなどは、アトピー性皮膚炎と診断される犬の中で多くを占める犬種です。かなり噛み砕いて解釈すると、遺伝的素因=アトピーになりやすい犬種がいる、としていいと思います。
これがアトピーの犬の皮膚です。
↑赤いですね。毛もまばらで掻くことで毛が抜けているのかな、と想像します。
つまり、犬アトピー性皮膚炎は炎症と痒みを起こす病気だと理解してください。痒みがないアトピーは考えにくいです。“フケ”や“カサブタ”も基本的に作りません。
↑これは、細菌の感染で起こる「細菌性皮膚炎」の写真です。カサブタが目立ちますね。
これはアトピー性皮膚炎には、その多くで見られる症状や傾向があるということです。
以下に羅列すると、
となります。犬アトピー性皮膚炎がこの全てを必ず満たすわけではないですが、この多くを満たせば(5個以上)、アトピー性皮膚炎の疑いは高まります。
アトピー性皮膚炎は、最終的に環境アレルゲン(花粉やハウスダストなど)に対してアレルギーを起こす病気です。このアレルギーが起こる背景にIgEと言うものが関与しています。ただ一旦ここで説明すると長くなるので、「アトピー性皮膚炎の原因はアレルギーなんだ」というふうに思ってもらえれば良いかと思います。
これらのことをまとめると、『特定の犬種がなりやすく、かゆみを起こし症状に特徴のあるアレルギーが関与している皮膚病』と言う理解でいいのかなと思います。
皮膚科の教科書「Small Animal Dermatology 7th(小動物皮膚科学 7版)」に載っている内容で、犬アトピー性皮膚炎の原因としては、「遺伝的素因」、「バリア機能」、「免疫学的異常」、「その他の素因」が挙げられています。なのでこれらを順番に説明していきます。
先程の犬のアトピー性皮膚炎の定義でも出てきたことばですね。これは遺伝子に「皮膚を強くする物質を作る」、「潤いを保つ成分(天然保湿因子)が皮膚に十分ある」、「アレルギーに関与する物質(IgE)を通常量作る」、「免疫細胞のバランスを整える」などの情報があります。
この遺伝子の内容に異常があることよって、「皮膚を強くする物質を作る作らない」、「潤いを保つ成分(天然保湿因子)が皮膚に十分ある少ない」、「アレルギーに関与する物質(IgE)を通常量作るたくさん作る」、「免疫細胞のバランスを整えるが崩れる」となり、生まれつきアトピー性皮膚炎を発症しやすくなります。
重要なものとしてセラミドと天然保湿因子があります。セラミドは細胞間脂質と言って、皮膚の水分が蒸発しにくくする脂で、これが少ないと乾燥肌となります。天然保湿因子は名前の通りで、皮膚の細胞内に水分を留めておく働きがあり、天然保湿因子が少ないとやはり皮膚は乾燥します。この皮膚の乾燥が、皮膚バリア機能を下げる要因になります。化粧品でいうと、天然保湿因子 → 保湿液、セラミド → 乳液でしょうか。
アトピー性皮膚炎の犬では、このセラミドと天然保湿因子が少なくなり皮膚のバリア機能が低下することにより、アレルギーになりやすくなったり皮膚の炎症が起こりやすくなっているのではと考えられています。
これは免疫調節細胞のTリンパ球(Ⅰ型、Ⅱ型などがある)において、通常はⅠ型 > Ⅱ型のバランスですが、犬アトピー性皮膚炎ではⅠ型 < Ⅱ型のバランスになっていると言われています。Ⅱ型のT細胞は、皮膚の炎症・痒みの発生に大事な働きをしているため、Tリンパ球がⅡ型優勢になりやすいことがアトピー性皮膚炎の発症の素因になると考えられています。
今まであげた原因以外にもいろんな要素があるのではと報告されています。ネット記事とかでもよく取り上げられる内容で、多くの方の興味はここに集まっているのかなとも思います。
いろいろな報告があります。
などがあります。腸内細菌に対して手を加えることで、アトピー性皮膚炎の発症リスクを下げることができるかもしれません。
今までのことを図に示すとこのような感じです。
全てと理解する必要はありません!大事なのは、
とご理解いただければ十分かと思います。
まずアトピー性皮膚炎の診断において大事なことは「他の病気がないこと」です!
医療用語では、“除外診断”といいます。つまり「あれでもない、これでもない、、、じゃあ残るのはアトピー性皮膚炎だよね。」っという考え方です。この除外診断を押さえながら、次に大まかな流れを書いていきます。
①犬種(アトピー性皮膚炎が多い犬種であれば、その疑いを強く持ちます)、年齢(1〜3才での発症が多いです)、痒みの有無など(前回お話しした“特徴的な臨床徴候”)、といった内容を確認し、どの程度アトピー性皮膚炎を疑っていくべきか判断します。
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②皮膚検査を行い、他に痒みを起こす病気(細菌、カビ、ダニなど)がないことを確認します。
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③アトピー性皮膚炎以外の病気の可能性や、もう少し裏付けが欲しい場合に血液検査、ホルモン検査、アレルギー検査、皮膚病理検査などを提案します。ここで同意が得られれば、それらの検査を実施します。
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④③の検査の結果アトピー性皮膚炎以外の病気が考えにくい場合、もしくは③の検査をしてなくてもアトピー性皮膚炎が1番疑わしい場合、
飲み薬 and/or 塗り薬を使用し経過を確認します。
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⑤治療への反応が概ね想定範囲であれば、アトピー性皮膚炎であると診断します。
こんな感じです。ここで一部の人は「あれ?アレルギー検査で診断するんじゃないの?」と思われるかもしれません。これは多くの飼い主さんや時には獣医さんも誤解しているところかと思うので、もう少し詳しく説明します。
まずアレルギー検査とはなにかと言うと、血液中にあるアレルゲン(アレルギーを起こす物質のこと)に反応するIgE抗体を抽出してその量を測る検査です。その量が多いと、その物質でアレルギーが起こるリスクがあると考えられます。
例えば、スギ花粉に反応するIgE抗体が多い=スギ花粉でアレルギーを起こすリスクがある、といった感じで解釈します。
じゃあこのアレルギー検査が動物医療ではどうかというと、実際はこれだけでアトピー性皮膚炎(やアレルギー性皮膚炎)の診断ができる検査ではありません。アレルギー検査の結果は、アトピー性皮膚炎の診断の一つの指標でしかないのです。
つまり、アレルギー検査陽性≠アトピー性皮膚炎であり、アレルギー検査陽性=アトピー性皮膚炎を起こしやすい体質である、という程度に考えたほうがいいと思っています。
これは、以下の2つが理由として言われています。
つまりブレが大きいんです。
アトピー性皮膚炎を発症している2頭の犬で、IgE値に大きな差があることもあります。また、アトピー性皮膚炎の犬を違う検査機関で同時に検査すると片方は陽性という結果が出ても、もう片方では陰性という結果が出ることもあります。
さらにはIgE抗体の量は多くならないけど、症状などはアトピー性皮膚炎と見分けがつかないアトピー“様”皮膚炎というものもあります。
「なんじゃそりゃ・・・」、って思いますよね💦笑
こういうものもあるので、アレルギー検査は絶対ではないんです。
じゃあアレルギー検査を強く勧めるのはどういった状況かというと、治療に減感作療法を取り入れる時くらいだと思います。減感作療法に関しては、また治療のところで詳しく触れようと思います。
アトピー性皮膚炎の診断についてはどうだったでしょう?
大事なことは、「1発でアトピーを診断してしまう様な“銀の弾丸”はないということ」「他の病気の有無を確認していく“除外診断”が大事だということ」。この2点をご理解いただければ十分だと思います^_^
ESSE動物病院 院長 福間
大阪府吹田市青山台2−1−15(北千里駅から徒歩8分)
駐車場は10台以上あります。(豊中市、箕面市、茨木市、摂津市からも車で来院しやすいです)
皮膚科(アレルギー、アトピーなど)、腫瘍科(がん)、循環器科(心臓病、腎臓病)、外科手術(麻酔管理と痛みの管理をしっかり行います)を得意としています
健康診断、予防接種、フィラリア・ノミダニ予防、避妊・去勢手術も行います。ご相談ください