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大阪府吹田市・豊中市・箕面市の皆さん。こんにちは。ESSE動物病院の院長 福間です。
今回も腫瘍科認定医試験勉強の一環としての投稿です。今回は腫瘍に関連するウイルスとして、FeLV(猫白血病ウイルス)とFIV(猫免疫不全ウイルス)について書いていきます。
内容は、
・FeLV(猫白血病ウイルス)とは?
・FeLV(猫白血病ウイルス)の症状と診断は?
・FeLV(猫白血病ウイルス)の治療と予防は?
・FIV(猫免疫不全ウイルス)とは?
・FIV(猫免疫不全ウイルス)の症状と診断は?
・FIV(猫免疫不全ウイルス)の治療と予防は?
について書いていきます。
FeLV(猫白血病ウイルス)とは猫に感染するウイルスで、感染することによって白血病やリンパ腫など様々な病気を発症する原因となります。
世界中に存在している感染症で、日本では外に出る猫の集団で感染率が高いといわれています。
ウイルスは、感染猫の唾液・涙・糞便の中に出てきます。それが口や鼻、傷口から感染するので、同居している感染猫からの濃厚接触や咬み傷が主な感染原因となります。
ただウイルスと接触しても全てで感染が成立するわけではなく、ウイルスに接触したうちの30%は自然抵抗性やウイルスの量が少ない、などの理由で、感染が成立しないといわれています。
また感染が成立したとしても、一時的な感染で終わる場合は新生子で0〜30%、8〜12週齢で50〜70%、成猫で80〜90%以上と言われています。
(つまり年齢が上がるほどに、腫瘍の原因になるような持続感染は起こりにくくなり、成猫はほとんど持続感染しないと考えられます。)
ウイルスに接触した猫の約70%で感染が進行します。
一時的な感染では、発熱や元気・食欲低下、リンパ節の腫れなどが起こり、稀に敗血症や貧血などで死亡することもあります。
その後、多くの猫では免疫が働きウイルスが排除されますが、残りのウイルスが排除できなかった猫はウイルスが骨髄に進行して持続感染が成立します。
骨髄への感染が成立した後は、ウイルスが全身に広がりますがその後の長期間にわたって無症状であることが多いです。(潜伏期)
持続感染の後、2〜3年でリンパ腫などの腫瘍や難治性の貧血などが起こり、持続感染猫の致命率は2年で63%、3.5年で83%と言われています。
FeLV感染猫では、2〜3歳で前縦隔型リンパ腫(胸の中のリンパ節の腫瘍)を発症するのが典型例です。
診断は、院内の簡易検査キットで行うのが一般的です。この検査では、血液中にFeLV(猫白血病ウイルス)がないかを調べます。
注意事項としては、
ウイルスを排除する治療はないので、腫瘍や貧血などには個々の治療を行います。
例えば、FeLV感染のある前縦隔型リンパ腫に対しては、通常のリンパ腫と同様に化学療法(抗がん剤治療)を行います。
また、感染後すぐの急性期には猫の免疫がウイルスを排除しようとしている可能性を考慮して、ステロイドやストレスなど免疫を下げる可能性のあることは避けたほうがいいと考えられます。
この病気に対しては予防が特に重要です。
FeLVは体の外ではとても不安定で、室温で数分〜数時間で感染性を失います。また、太陽光線、紫外線、ほとんどの消毒薬に反応して失活します。
手洗いなど、人がウイルスを運ばない様にすることもとても大事です。
ワクチンは8週齢以降で1回接種し、その4週後にもう1回接種します。ただ、このワクチンは必要に応じて接種を行うべきだと考えます。
それは、猫はどのワクチンでも接種したところにワクチン関連肉腫という悪性腫瘍が発生する可能性があるためです。
またこのワクチンは持続感染を防御する効果はあるとされていますが、一時的な感染も完全に予防するものではないため、やはり1番はウイルスとの接触をゼロにする努力を行うことだと考えられます。
FIV(猫免疫不全ウイルス)とは猫に感染するウイルスで、感染すると最終的に体を守る免疫機構が働かなくなります。
世界中に存在している感染症で、日本では19:1で圧倒的に外猫に多く、また感染猫ではメスよりもオスの方が2倍以上多いことから野外での喧嘩を通じて感染が起こっている可能性も高いと考えられます。
ウイルスは、感染猫の唾液の中に出てきます。それが主に咬み傷への唾液の付着によって感染が起こると考えられています。接触による感染はないわけではないですが、FeLVなどの他のウイルスに比べて伝播の効率は悪い様です。疫学データの中では屋内感染は少ないようです。
一度感染が成立すると回復する猫は少なく、ほとんど全頭が持続感染になります。ただ、最近は明らかなエイズ(免疫不全状態)を発症するものは減少傾向にあって、病原性は低下してきていると考えられています。
FIVは、急性期 ⇨ 無症候性キャリア ⇨ 持続性全身性リンパ節腫大 ⇨ AIDS関連症候群 ⇨ 後天性免疫不全症候群、と変化していきます。
それぞれについて説明します。
診断は、院内の簡易検査キットで行うのが一般的です。この検査では、血液中にFIV抗体がないかを調べます。
注意事項としては、
があります。院内検査で陽性であっても、再検査やPCR検査などを検討しましょう。
FIVに対する特効薬はありません。
一部の報告では、FeLV/FIV陽性の猫にインターキャットを投与した場合、1年間の観察期間中に臨床症状や致死率に関してインターキャットを投与しているほうが良好な結果だったというものがあります。
この病気に対しても予防が重要です。
FIVも体の外ではとても不安定で、室温で数分〜数時間で感染性を失います。また、太陽光線、紫外線、ほとんどの消毒薬に反応して失活します。
手洗いなど、人がウイルスを運ばない様にすることもとても大事です。
ワクチンは存在するものの、FIVにはA〜Eの5つのサブタイプが存在し、それらへの防御効果も報告上様々であるので、ワクチンによって全ての感染が予防できるわけではないと考えたほうがいいと思います。
また、このワクチンも必要に応じて接種を行うべきだと考えます。それは、猫はどのワクチンでも接種したところにワクチン関連肉腫という悪性腫瘍が発生する可能性があるためです。
やはり最大の予防法は、感染源との接触を避けることでウイルス陰性(PCR検査で判断)の猫だけで室内飼育をしていれば、感染の危険はほとんどゼロだと考えられます。
今回は腫瘍に関連する猫のウイルスである、FeLV(猫白血病ウイルス)・FIV(猫免疫不全ウイルス)について書いていきました。
どちらのウイルスも感染力の強いウイルスではないので、ウイルスの特性をしっかり理解し感染源を遠ざければ感染のリスクはかなり少なくなります。
また、診断を行う検査も実は結構ややこしいので、単純に「院内の簡易検査が陽性⇨感染している⇨重症になる」ではありません!
きちんとした診断と予防を行い、過剰に隔離されたりする猫が減らすことも重要だと思います。
検査結果の解釈でわからないことあれば、いつでもご相談ください。
ESSE動物病院 院長 福間
大阪府吹田市青山台2−1−15(北千里駅から徒歩8分)
駐車場は10台以上あります。(豊中市、箕面市、茨木市、摂津市からも車で来院しやすいです)
皮膚科(アレルギー、アトピーなど)、腫瘍科(がん)、循環器科(心臓病、腎臓病)、外科手術(麻酔管理と痛みの管理をしっかり行います)を得意としています
健康診断、予防接種、フィラリア・ノミダニ予防、避妊・去勢手術も行います。ご相談ください