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こんにちは。
ESSE動物病院の院長 福間です。
今回は、犬に多い膝の病気である『前十字靭帯断裂(ぜんじゅうじじんたいだんれつ)』とその治療である『TPLO』について紹介しようと思います。
前十字靭帯とは、膝の関節の中に存在する靭帯で膝の上の骨である大腿骨(だいたいこつ)と下の骨である脛骨(けいこつ)の位置がずれないようにする役割があります。
写真で示しているように膝の周りというよりも、関節の中に存在する靭帯です。
前十字靭帯断裂とは文字通り、この前十字靭帯が切れてしまう病気です。
人では、スポーツ選手などがなる病気というイメージですが、実は犬にも多い病気の一つです。
犬の膝関節に起きる病気としては膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)の次に多い病気だと思います。
※膝蓋骨脱臼は、「パテラ」という言い方もされていて獣医さんで膝の関節が緩いと言われた時は、大抵この病気のことを言っています。
犬の場合は、前十字靭帯自体が弱くなることで切れやすくなり切れてしまうことが多いです。犬で、外傷による前十字靭帯断裂は少ないとされています。
また前十字靭帯断裂と一言で言っても前十字靭帯が完全に切れてしまっている「完全断裂」や、一部が切れている「部分断裂」、膝関節内の他の組織の損傷が起こる「半月板損傷」と、色々な状態がありこれによって症状や検査結果、治療も変わってきます。
前十字靭帯断裂の症状は、先に書いたように完全断裂か、部分断裂か、半月板損傷があるか、によっても変わってきますが、
今回は「こういった症状であれば病院に行ったほうがいいよ!」という内容を書こうと思います。
・後ろ足をかばうように歩く。
・後ろ足を触られるのを嫌がる。
・後ろ足を完全に上げて、3本足で歩く。
・急に鳴いて足をつかない。
これらの症状が見られたときは、前十字靭帯断裂やそれ以外の足の病気を疑います。
一度病院に受診して診察や検査を受けることをお勧めします。
これは、獣医師の判断によるところが大きいですが、どんな検査をするのか簡単に知っておくだけでも、
心の準備ができると思います。
検査は、
・視診&触診
・レントゲン検査
・超音波検査
を行う病院が多いと思います。
視診とは、動物の立つ様子・歩く様子を見ることで異常を確認することを言います。
触診とは、触ってどこが痛がるか、どこの動きがおかしいかを確認することを言います。
特殊な機械を使わない検査ではあるものの、これらが一番重要な検査だと思います。
スキルの差もここが一番出るかと思います。
ここで異常があると考えるところを、後のレントゲン検査やエコー検査で確認します。
レントゲン検査は、前十字靭帯が切れることで起こる膝の歪みや、膝の腫れを確認することができます。
下の画像が実際のレントゲン検査の画像です。
黒の矢印は膝の骨同士一番力がかかるところです。
正常な足はこれが一直線上にあるので大丈夫ですが、靭帯が切れている足はこれがずれているので、
ぐっと踏み込むと膝の骨同士が滑ってしまい軟骨が削れて痛みが出てしまいます。
レントゲンではこのような変化が見れたり、関節が腫れているかどうか、その他の病気があるかないか(骨折や骨の腫瘍など)も確認することができます。
超音波検査は切れている靭帯をみたり関節内の変化を見ることができます。
ただ、私自身は靭帯を評価するという前十字靭帯断裂に対しての超音波検査はあまり行わず、
関節内の腫瘍など何か別の組織が増えてきていないかを確認するために、この検査を行うことが多いです。
では次にいよいよ前十字靭帯断裂の治療法を書いていきます。
治療の選択肢としては、
・内科管理
・関節外法
・TPLO(脛骨高平部水平化骨切り術)
です。
今回は内科管理とTPLOについて書いていきます。
前十字靭帯断裂の内科管理は、痛み止めなどを使用して手術をせずになるべく負担を和らげるとともに関節が自然と固まってくるのを待つというものです。
また手術まで一時的に行うことも多くあります。
様々な痛み止めや、サプリメント、運動制限や、環境改善を行い、膝の痛みや膝にかかる負担を和らげます。
手術が様々な理由で選択できない時は、この内科管理を長期間行うこともあります。
これは手術の方法の一つです。
原理少し難しいのですが、すごくシンプルにいうと、「脛骨の先が斜めになっているのがダメだから水平にしましょう」という内容の手術です。
これが手術前の脛骨(下の骨)の先です。斜めになっていて大腿骨(上の骨)が力をかけると、坂を車が転がり落ちるように骨同士が噛み合わずずれてしまいます。
この状態では、骨同士の軟骨も擦れてしまい痛くて歩けません。
これを手術で、
このように脛骨(下の骨)の先の角度を調整します。
すると、大腿骨(上の骨)が力をかけても斜めになってないので、力がしっかりとかかり骨同士ずれることなく歩けるようになります。
つまり、手術によって左の状態が右の状態になり、歩けるようになるんです。
この手術のいいところは、他の手術法よりも治りが早かったりご家族の満足度が高いという点だと思います。
逆に悪いところは、特殊な手術器具が必要であったりある程度術者の技量が必要になってくることです。
当院で診断した前十字靭帯断裂の動物は、二次診療施設に紹介をさせていただいたり、TPLOの執刀ができる先生を病院に呼んで当院で手術をおこなっています。
この前十字靭帯断裂は、最初に書いたように前十字靭帯が弱くなることで最後には切れてしまい発症する病気です。
ですので、片側の膝が靭帯断裂を起こすともう反対側も断裂を起こす可能性があり、片側が前十字靭帯断裂を起こした場合3年以内に反対側が断裂する可能性は、85%とする報告もあります。
この靭帯断裂を起こしてしまった場合は、体重管理をしっかりおこなったり、生活環境を滑りにくくすること、時にサプリメントなども使用しながら、再発しないようしっかり管理する必要があると考えています。
ESSE動物病院 院長 福間
大阪府吹田市青山台2−1−15(北千里駅から徒歩8分)
駐車場は10台以上あります。(豊中市、箕面市、茨木市、摂津市からも車で来院しやすいです)
皮膚科(アレルギー、アトピーなど)、腫瘍科(がん)、循環器科(心臓病、腎臓病)、外科手術(麻酔管理と痛みの管理をしっかり行います)を得意としています
健康診断、予防接種、フィラリア・ノミダニ予防、避妊・去勢手術も行います。ご相談ください