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大阪府吹田市・豊中市・箕面市の皆さん。こんにちは。
院長の福間です。
今回のお題は、「犬の変形性関節症」についてです。
犬の変形性関節症について簡単に説明させてもらい、
その後に犬の変形性関節症に対して、最近日本でも承認が降りた「リブレラ」という新しいお薬の話をしようと思っています。
よろしくお願いします。
関節炎は聞き馴染みのある言葉かと思いますが、変形性関節症(へんけいせいかんせつしょう)というのはあまり聞き馴染みのない言葉かもしれません。
変形性関節症というのは、「骨と骨の間でクッションの役割をしている軟骨に過度の負担がかかることで次第に関節が変形し、慢性的な痛みや動作に困難が生じる関節疾患の1つ」とされています。この変形性関節症で起こることの中に、関節炎が含まれていて関節炎が起こることでさらに関節軟骨の変化などが進むと考えられています。
実際のところは、関節炎≠変形性関節症なのですが、今回は説明する分にはあまり支障にならないので関節炎≒変形性関節症として書いていきます。
変形性関節症は、主に下記のようなことが順番に関節で起こり進行していきます。
①関節軟骨に過度の負荷がかかる
②軟骨の表面が削れて軟骨の変化が起こり、その中で関節に炎症が起こり始める
③関節の動かせる範囲(可動域)が減ってきて、痛みも強くなり日常生活でも明らかな症状(足をかばう、散歩を嫌がる、動きがゆっくりなど)が出てくる
④周りの骨も変形してきて、最終的には関節が動かなくなる
だいたい周りが見て症状に気付くのは③かもしくは④だと思います。(③でも年齢のためと考えられがちだと思います)
ただ本人が痛みを感じ出すのは②なので、私たち医療関係者やご家族がより早期に気づいてあげる必要があると思います。
では、どうすれば自分の家の犬が関節に問題を抱えているのかわかるのでしょうか?
まずは、下記のような明らかな症状がある場合は変形性関節症(関節炎)があると判断できると思います。
・歩き始めや動き始めの動きがゆっくり
・散歩を嫌がるようになる
・階段の上り/下りや飛び乗る/飛び降りる運動をしなくなる
・歩幅が若い頃よりも狭くなる
どうでしょうか?
もしこれらが見られる場合は、自分の子は関節炎による痛みを抱えているかもしれません。
では先に書いたような症状がなければ関節は悪くないといえるのでしょうか?
答えは、「変形性関節症では何が起きているのか」に書いたように「No!」です。
症状だけで判断すると、②の段階や③で症状が軽度な子では日常での行動変化など症状がはっきりとしないため気付けない可能性が高いです。
では病院での検査では気づけるのかというと、それも難しいかと思います。
ではどうすればより多くの子の関節の異常に気づけるのでしょうか?
私はその答えの一つは、「変形性関節症になりやすい子」+「微妙な変化」⇨「試験的な治療による行動の変化を確認して判断する」ではないかと思います。
変形性関節症になりやすい子はいくつか報告されています。
・高齢(10歳以上の犬の40%以上で変形性関節症であったという報告があります)
・関節形成不全がある犬(若齢でも変形性関節症になりやすい)
・膝蓋骨脱臼のある犬(小型犬で変形性関節症になりやすい理由の1つ)
・肥満
・大型犬(74%が変形性関節症などを持っていたという報告があります)
獣医師の間では、変形性関節症=大型犬の病気みたいなイメージもあったりします。
確かに大型犬での有病率は高いですが、小型犬でも40%弱で変形性関節症などがあったという報告もあるので、
決して大型犬だけの病気じゃないというのは私たち獣医師や看護師も認識しないといけないことだと思います。
では上記のなりやすい犬が少し若い時と比べて立ち上がる様子がゆっくりであった場合、
通常は「年のせい」と判断されると思いますが、このブログを読んでいただいた方は「もしかして関節が痛いのかな?」と思ってもらえるかと思います。
その時に行う試験的な治療とはどのようなものがあるのでしょうか?
①NSAIDs(エヌセイヅ)
これは、痛み止め・炎症どめのお薬のグループになります。
人のお薬だと、「ロキソニン」や「イブプロフェン」がこのグループのお薬になります。
動物用のお薬も5種類ほどあります。どれも有効性はあり副作用も少ない使いやすいお薬です。
飲み薬や注射のお薬などがあり、多くのお薬が即効性があり使いたい時にさっと効いてくれるキレにいいお薬です。
価格もそこまで高くなく、日常的に使いやすいところは多いです。
問題は、長期投与の場合肝臓、腎臓、胃腸などに副作用が生じ、それぞれ「肝障害」「腎障害」「嘔吐・下痢」などの症状が問題となることがあります。
私はこれらの薬は通常は短期使用時に使用します。(抗がん治療の時は例外です)
②リブレラ(ベジンベトマブ)
これが今回最初に書いていた新しく承認を得た薬です。
今までの痛み止めとは全く作用機序が異なる、世界初の変形性関節症の疼痛管理のための抗体医薬です。
③その他
お薬と同じくらい重要なものとして、運動制限や生活環境の整備だと思います。
『関節に負担をかけない』ということをイメージして、散歩の量や内容などの制限したり、普段過ごす生活スペースを整えることが
変形性関節症を悪化させない上でとても重要です。
また薬ではないですが、理学療法やサプリメントも補助的な治療として有効なこともあります。
ではこの新しく出たリブレラとはどんなお薬なのでしょうか?
リブレラは関節炎の痛みの発生にかかわるNGF(エヌジーエフ:神経成長因子)を阻害する、今までのお薬と全く作用機序の異なるお薬です。
実際に使う上で重要な今までのお薬との違いは以下の通りです。
・月に1回の注射薬
・抗体医薬なので副作用の発生がとても少ない
実際に効くのか?という話と同じかそれ以上に、多くの方の関心は副作用かと思います。
副作用に関しては後程まとめて書かせていただきます。
では実際にリブレラはどのくらい効くのでしょうか?
まず製薬会社は、2ヶ月間の計2回投与後に薬の有効性を判断するように言っています。
そして痛みの改善が見られた割合は、1ヶ月目で43%、2ヶ月目で50%です。
変形性関節症は関節軟骨の変化など何をしても元に戻らない異常が起きているにもかかわらず、
月1回の注射で半数近くの犬の痛みが改善し、日常生活がより快適に送れるようになるのはとてもすごいことだと思います。
リブレラの副作用はとても少ないとされています。
これは、リブレラが抗体医薬であるからです。
抗体医薬というのは、治療したいところにのみ作用するスナイパーのようなお薬です。余計なところに効かない分副作用はとても少なくなります。
また抗体医薬は、お薬としての処理を肝臓や腎臓に頼らず行えるので、肝臓や腎臓に負担をかけることもなく、また肝臓や腎臓の機能が落ちている子に使用することができます。
さらに、「神経成長因子というものを阻害するなら、神経疾患がある子に良くないんじゃないか?」という疑問を持たれる方もいるかと思いますが、神経成長因子は若い時に重要なものなので1歳以上の犬には特に問題になることはありません。
実際の有害事象の報告も以下の通りです。(有害事象:お薬の投与時に報告されたもの。お薬との因果関係は不明なもの。)
・嘔吐 2.9%
・食欲不振 2.2%
・咳 2.2%
・破行 2.2%
通常はお腹の症状のみで、今までのお薬のように腎臓や肝臓への副作用は報告されていません。
なのでこの副作用という点では、とても使いやすい薬だと考えています。
ただ副作用ではないのですが、あえて短所を上げるとすると注射薬なので月1回病院に行かないといけないこと(逆に飲ませなくてもいいという長所でもあります)、
新しいお薬なので比較的高価であることが挙げられます。価格は体重によって変わりますが、10,000〜20,000円/回です。
今回は変形性関節症についての話や、新しいお薬の話を中心に書かせていただきました。
変形性関節症は、まずこのような異常が犬にも起こることを知ることがまずとても重要です。
そして気づいた後に適切な治療を行うことができれば、より素晴らしいと思います。
この新しいお薬は、関節の痛みを疑った時に投与することもできるお薬なので、
気になる方は一度ご相談ください。
ESSE動物病院 院長 福間
大阪府吹田市青山台2−1−15(北千里駅から徒歩8分)
駐車場は10台以上あります。(豊中市、箕面市、茨木市、摂津市からも車で来院しやすいです)
皮膚科(アレルギー、アトピーなど)、腫瘍科(がん)、循環器科(心臓病、腎臓病)、外科手術(麻酔管理と痛みの管理をしっかり行います)を得意としています
健康診断、予防接種、フィラリア・ノミダニ予防、避妊・去勢手術も行います。ご相談ください