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大阪府吹田市・豊中市・箕面市の皆さん。こんにちは。ESSE動物病院の院長 福間です。
今回は、皮膚科の投稿として、アトピー性皮膚炎について書いていこうと思います。
内容は
・犬のアトピー性皮膚炎とは?
・犬のアトピー性皮膚炎の原因
・犬のアトピー性皮膚炎の診断
について書いていきます。
これ以降の内容は②〜で書いていきますので、もう少しお待ちください。
まずは、「犬アトピー性皮膚炎ってなんですか?」の話からしていきます。
犬アトピー性皮膚炎とは、「遺伝的な素因をもち、炎症と痒みを起こすアレルギー性皮膚疾患で、特徴的な臨床徴候と多くが環境アレルゲンへのIgE抗体を持っている。」と、教科書には定義として書いてあります。
……。
難しいですね…。(笑
けれど、定義を抑えておけば全体への理解というのはそうそうブレないものなので、まずこの定義をしっかりと抑えながら、「犬アトピー性皮膚炎とはなんぞや!」を説明していこうと思います。
日本では柴犬、プードル、チワワ、フレンチ・ブルドッグ、シー・ズー、ダックスフンド、ヨーキー、ウエスティ、ゴールデン・レトリバーなどはアトピー性皮膚炎と診断される犬の中で多くを占める犬種です。
かなり噛み砕いて解釈すると、遺伝的素因=アトピーになりやすい犬種がいる、としていいと思います。
上の写真の皮膚は赤いですね。毛もまばらで掻くことで毛が抜けているのかな、と想像します。
つまり、犬アトピー性皮膚炎は炎症と痒みを起こす病気だと理解してください。
痒みがないアトピーは考えにくいです。“フケ”や“カサブタ”も基本的に作りません。
※ただ細菌性皮膚炎を併発している場合は、カサブタなどができることがあります。
これはアトピー性皮膚炎には、その多くで見られる症状や傾向があるということです。
以下に羅列すると、
①3才以下で発症している。
②室内飼育である。
③かゆみはステロイド(グルココルチコイド)で良くなる。
④最初はかゆみのみで他の皮膚の異常がない。
⑤前足に症状がある。
⑥耳に症状がある。
⑦耳の端には症状がない。
⑧腰のあたりの皮膚に症状がない。
となります。
犬アトピー性皮膚炎がこの全てを必ず満たすわけではないですが、この多くを満たせば(5個以上)、アトピー性皮膚炎の疑いは高まります。
ここはアレルギー検査の考え方について大事なところなのですが、少しややこしいのでまた後で詳しく書きます。
要点だけ書くと、アレルギー検査はする意味はあるが“犬アトピー性皮膚炎を診断する”という点に置いて必須のものではない、ということです。
今回の話をまとめると、犬アトピー性皮膚炎は
①特定の犬種がなりやすい。
(遺伝子が一部関与しているから)
②“かゆみ”を起こす
③特徴的な症状である。
④アレルギーが関与している
(が、アレルギー検査は重要でない?)
という理解でいいかなと思います。
まだわかりにくいでしょうか…。(笑
ただ、大事なところはこれで抑えていると思います。
アトピー性皮膚炎の大体のイメージはついたでしょうか?
かゆい皮膚病で、症状に特徴があって、アレルギーが関与しているんだな、というイメージであればGOODです!
次に、犬アトピー性皮膚炎の原因について話していこうと思います。
原因は、診断方法や治療を考える上でとても重要な要素だと思いますし、最適な医療を考える上で必要不可欠な情報だと思います。
ちなみに皮膚科の話に関しては個人的な見解を除き、基本的には「Small Animal Dermatology 7th(小動物皮膚科学 7版)」に載っている内容を引用しています。
そして犬アトピー性皮膚炎の原因としてこの本に載っている内容は、「遺伝的素因」、「バリア機能」、「免疫学的異常」、「その他の素因」が挙げられています。
これは遺伝子に「皮膚を強くする物質を作る」、「潤いを保つ成分(天然保湿因子)が皮膚に十分ある」、「アレルギーに関与する物質(IgE)を通常量作る」、「免疫細胞のバランスを整える」などの情報があるのですが、この遺伝子の内容が通常と違うことによって、
「皮膚を強くする物質を作る作らない」、「潤いを保つ成分(天然保湿因子)が皮膚に十分ある少ない」、「アレルギーに関与する物質(IgE)を通常量作るたくさん作る」、「免疫細胞のバランスを整えるが崩れる」となり、生まれつきアトピー性皮膚炎を発症しやすくなります。
重要なものとしてセラミドと天然保湿因子があります。セラミドは細胞間脂質と言って、皮膚の水分が蒸発しにくくする脂で、これが少ないと乾燥肌となります。
天然保湿因子は名前の通りで、皮膚の細胞内に水分を留めておく働きがあり、天然保湿因子が少ないとやはり皮膚は乾燥します。
この皮膚の乾燥が、皮膚バリア機能を下げる要因になります。
化粧品でいうと、天然保湿因子 → 保湿液、セラミド → 乳液でしょうか。
アトピー性皮膚炎の犬では、このセラミドと天然保湿因子が少なくなり皮膚のバリア機能が低下することにより、アレルギーになりやすくなったり皮膚の炎症が起こりやすくなっているのではと考えられています。
これは免疫調節細胞のTリンパ球(Ⅰ型、Ⅱ型などがある)において、通常はⅠ型 > Ⅱ型のバランスですが、犬アトピー性皮膚炎ではⅠ型 < Ⅱ型のバランスになっていると言われています。
Ⅱ型のT細胞は、皮膚の炎症・痒みの発生に大事な働きをしているため、Tリンパ球がⅡ型優勢になりやすいことがアトピー性皮膚炎の発症の素因になると考えられています。
ここが正直一番面白いかもしれません。(笑
いろいろな報告があります。
①花粉が飛ぶ時期に生まれた子は、アトピー性皮膚炎に発症しやすい。
②授乳期に母犬に市販品を与えていた子犬は母犬に自家調理食を与えた子犬より、アトピー性皮膚炎に2倍なりやすかった。
③妊娠中から授乳中まで、腸内細菌を整えるサプリメントを飲んでいた母犬の子犬は、アレルギー発症のリスクが下がった。
上記のようなものがあります。
腸内細菌に対して手を加えることで、アトピー性皮膚炎の発症リスクを下げることができるかもしれません。
そしてこの今までの話をまとめるとこのような形になります。
犬アトピー性皮膚炎の原因どうでしたか?
ややこしいですよね。(笑
この話を全部理解する必要はなくって、原因って一つじゃないんだ、とか、こんなことも関係していたんだ、とか、思ってもらえたら十分だと思います。
次に犬アトピー性皮膚炎の診断について書いていきます。
今回は“わたし”のやり方を書いていきます。
まずアトピー性皮膚炎の診断において大事にしていることは「他の病気がないこと」です!
医療用語では、“除外診断”といいます。
つまり「あれでもない、これでもない、、、じゃあ残るのはアトピー性皮膚炎だよね。」という考え方です。
この除外診断を押さえながら、次に大まかな流れを書いていきます。
①犬種、年齢、痒みの有無など“特徴的な臨床徴候”(「犬のアトピー性皮膚炎とは?」の内容)が当てはまるかを確認する。
↓
②皮膚検査を行い他に痒みを起こす病気(細菌、カビ、ダニなど)がないことを確認する。
↓
③-①診断的治療として飲み薬 and/or 塗り薬を使用し経過を確認する。
or
③-②さらに他の病気の有無を確認するため、血液検査、ホルモン検査、アレルギー検査、皮膚病理検査などを実施する。
※費用がかかる・傷ができるなど、メリット/デメリットが複雑になるのでどこまでするか飼い主とよく相談します。
「診断」の流れはどうでしたか?
複雑そうに思えて、でも実際の流れを見ると単純そうででもこの中身を具体的にすると、やっぱり複雑になると思います。
犬アトピー性皮膚炎の診断では、
◎1発でアトピーを診断してしまう様な銀の弾丸はないということ、
◎他の病気の有無を確認していく“除外診断”が大事だということ、
を知ってもらえたら十分だと思います。
さて、話のついでに少し触れておきたい「経表皮水分蒸散量」と「アレルギー診断」についてもう少し書いていきます。
まず経表皮水分蒸散量(TEWL)から説明していきます。
ちなみに経表皮水分蒸散量とは、字の通り皮膚からどれだけ水分が逃げているのかを測定することです。
アトピー性皮膚炎の皮膚は、皮膚バリア機能が低下している。
↓
そんな皮膚は水分保持能力が低い。
↓
では皮膚からどれだけ水分が逃げているか測定出来れば、皮膚バリア機能を評価できる。
こんな理屈で、水分蒸散量を測ることでより皮膚バリア機能が低下しているのか、どの程度アトピー性皮膚炎を疑えるのかがわかります。
ただこの検査は獣医療ではまだまだ広まっていないんです。
検査を正確に行うのに手間がかかったり、臨床データが少なかったり、検査の機械が高価だったりするのがその原因なのかなと思います。
データがさらに集まれば診断や皮膚ケアの手法の検討にも使え、よりアトピー性皮膚炎の管理がやりやすくなるかもしれません。
当院もこのようなデータの集積に協力できる病院でありたいなと思います。
次はアレルギー検査です。
アレルギー検査は血液中にあるアレルゲン(アレルギーを起こす物質のこと)に反応するIgEを抽出しその量を測る検査です。
※例えば、花粉に反応するIgEは〜、牛肉に反応するIgEは〜というような感じです
何度か書いているので先に結論を言うと、通常アレルギー検査として行われているアレルゲン特異的IgE検査は、減感作療法を行う場合を除き、必ず行う検査ではありません。
それは、これだけで診断が下せる検査ではなくアトピー性皮膚炎の一つの指標だからです。
理由としては、
①IgEの値は個体差が大きい。
②検査機関での検査方法が統一されていない。
※ヒトだと検査方法が統一されていてここが検査の信頼度の差になっています。
つまりブレが大きいんです。
アトピー性皮膚炎を発症している異なる犬で、IgE値に大きな差があることもありますし、同じアトピー性皮膚炎の犬を違う検査機関で同時に検査すると片方は陽性という結果が出ても、もう片方では陰性という結果が出ることもあります。
さらには、IgE値は高くならないけど、症状などはアトピー性皮膚炎と見分けがつかないアトピー“様”皮膚炎というものもあります。
なんじゃそりゃ、って思いません?(笑
こういうものもあるので、アレルギー検査は絶対ではないんです。
原因のまとめの図覚えていますか?
この中で今回の、TEWLとアレルギー検査に関連するところを四角で囲みました。
TEWLは皮膚バリア機能と、アレルギー検査は血液中のIgE値と関連があります。
学んだことが繋がっていくと楽しいですよね。
犬アトピー性皮膚炎の診断はどうでしたか?
アトピー性皮膚炎の診断は100%言い切るのは難しいと思います。
ただ、より的確にアトピー性皮膚炎を診断できるよう引き続き頑張っていこうと思います。
続きの治療に関しては、②に書いていきます。
しばらくお待ちください。
ESSE動物病院 院長 福間
大阪府吹田市青山台2−1−15(北千里駅から徒歩8分)
駐車場は10台以上あります。(豊中市、箕面市、茨木市、摂津市からも車で来院しやすいです)
皮膚科(アレルギー、アトピーなど)、腫瘍科(がん)、循環器科(心臓病、腎臓病)、外科手術(麻酔管理と痛みの管理をしっかり行います)を得意としています
健康診断、予防接種、フィラリア・ノミダニ予防、避妊・去勢手術も行います。ご相談ください