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「何度も膀胱炎になるんです」「抗生剤を飲むと良くなるけれど、またすぐに再発してしまう」
このようなお悩みで当院を訪れる愛犬の飼い主さまは少なくありません。
特にメス犬で繰り返す膀胱炎には、**目に見えにくい“構造的な問題”**が隠れていることがあります。
今回は、その中でもあまり知られていない「外陰部低形成」という病態と、それが原因で膀胱炎を繰り返していた愛犬が手術により快適な生活を取り戻した実際の症例をご紹介します。
「外陰部低形成」とは、本来あるべき外陰部の構造が十分に発達していない状態を指します。
特徴としては:
外陰部が皮膚に埋もれて見えにくい
シワが多く、通気性が悪い
尿や汚れがたまりやすい
常に湿った状態になりやすい
このような状態は、尿路感染症や外陰部の皮膚炎を引き起こす温床になります。
特に、外陰部の構造が未熟だと、尿が完全に排出されずに残尿が生じたり、外陰部に付着した尿が原因で膀胱まで細菌が侵入しやすくなるため、膀胱炎を繰り返す原因となります。
通常、膀胱炎は適切な抗菌薬の投与で一時的に改善します。
しかし、**そもそもの原因が「外陰部の構造」**にある場合、薬では根本的な解決にはなりません。
このような構造的な問題は、成犬になってから筋肉量の変化や体脂肪の変化によって、成犬になってから発症するということもあります。
今回ご紹介するのも2年もの間、月1〜2回のペースで膀胱炎にかかっていた患者さんです。
もちろんこのご家族は、愛犬を病院に連れて行きましたが、複数の病院で根本的な異常は確認できず抗生剤での対処を余儀なくされており、
飼い主さまは毎回の通院に心を痛めておられました。
問診と身体検査を行ったところ、外陰部が明らかに皮膚に覆われており、尿や分泌物が付着して湿っている状態が見られました。
さらに超音波検査・尿検査・細菌培養検査により、膀胱炎の所見が確認されました。
この時点で、外陰部の低形成が感染の“入口”になっていると判断し、形成手術をご提案しました。
外陰部形成術は、余分な皮膚を取り除いて外陰部を露出させる手術です。
この手術の目的は:
通気性を改善し、湿潤状態を防ぐ
尿や汚れがたまりにくい構造にする
感染リスクを減らす
手術自体は1時間程度の日帰り手術で行いました。
術後、抗菌薬と炎症止めを併用しつつ、数日間の安静期間を経て順調に回復。
術後1ヶ月以上経ちましたが、繰り返していた膀胱炎の発症は一度もなく、
飼い主さまも「こんなに元気で、再発もしないなんて」と喜んでくださいました。

手術前は上から皮膚が垂れて外陰部の多くが見えていない。
この病気は見た目だけでは判断が難しいこともありますが、以下のようなサインがある場合は注意が必要です:
メス犬で膀胱炎を繰り返している
陰部に赤みやただれがある
尿が付着している
早期に診断し、必要に応じて手術を行うことで膀胱炎の再発リスクを大幅に下げることができます。
当院では、泌尿器領域の疾患にも力を入れており、
経験豊富な獣医師による丁寧な診察
超音波・内視鏡・細菌培養などの精密検査が可能
マイナーな病気も考慮した治療方針の提案
手術後のきめ細かなアフターフォロー
といった体制で、愛犬が「病気と無縁の毎日」を送れるよう全力でサポートしています。
また、全ての繰り返す膀胱炎に手術が必要というわけでもなく、その異常に応じた「手術以外の選択肢」も含めたオーダーメイドな治療提案を行っていますので、不安な点は何でもご相談ください。
犬の膀胱炎は、ただの「繰り返す病気」ではなく、原因があって繰り返している病気です。
外陰部低形成という言葉はまだあまり知られていませんが、実は多くのメス犬が悩まされている隠れた疾患かもしれません。
「何度も膀胱炎を繰り返すけど、理由がわからない」
そんなときこそ、一度婦人科的な視点で見直すことが、本当の解決への第一歩になるかもしれません。
私たちエッセ動物病院は、愛犬とご家族の安心のために、見えない問題にも丁寧に向き合います。
どうぞお気軽にご相談ください。
大阪府吹田市の動物病院
ESSE動物病院吹田