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大阪府吹田市・豊中市・箕面市の皆さん。こんにちは。ESSE動物病院の院長 福間です。
今日は普段よく質問うける、『歯周病』について書いていきます。
歯周病って何?
歯石除去はなんで必要なの?
無麻酔歯石取りってどうなの?
このあたりを書いていきます^_^よろしくお願いします。
歯周病とは、歯と歯肉の間の歯周ポケットなどで細菌(歯周病病原菌)が増えることで、歯肉などの歯周組織に炎症などの異常が起こる病気です。
歯周病の症状は、
などです。
これらが見られたら、獣医師に一度相談してみてください!
ちなみにこれが健康な歯肉です。ピンク色でスッキリしていますね。
これは、歯周病の歯肉です。特に歯石に近いところは赤くなっています。また歯肉全体も腫れていてふっくらしています。
ではこのような歯周病は、何が原因で起こるのでしょうか?
それは、歯周ポケットで増殖する歯周病病原菌です。犬では、ポルフィロモナス・グラエ(Porohyromonas gulae)という菌が歯周病病原菌であると言われています。
これは、生きていくのに酸素を必要としない嫌気性菌という種類で、歯と死肉の間にある歯周ポケットの中で増殖します。
歯周ポケットの位置
またこの歯周ポケットが歯垢などで塞がっていると、酸素を必要としない歯周病病原菌はより増えやすくなります。
試行で蓋をされた歯周ポケットの中に、菌が増えている様子
そして、この歯周病病原菌が原因で歯肉に炎症が起こります。
歯肉に炎症が起こっている様子
さらにこの状況がひどくなると、歯周炎や歯槽骨が溶けてくるなど深刻な変化が起こります。
通常の歯と歯肉と歯槽骨
腫れた歯肉と溶けた歯槽骨
こうなったら大変です。では歯石除去などの、歯科治療は何をしていてどのような効果があるのかを見ていきましょう!
歯石除去でやっていることはなんでしょう?
当院では、歯石除去では歯石を取る『超音波スケーリング』と、歯の表面を磨いて歯石をつきにくくする『ポリッシング』という処置を行っています。
歯石で蓋をされた歯周ポケットには、先程の話と同様に歯周病病原菌が増えます。それにより歯肉などへの炎症が起こる、歯周病が起こってきます。
歯石で蓋をされた歯周ポケットに歯周病病原菌が増える様子
こうなってくると、いくら歯磨きをしようとも口をゆすごうとも、歯石が邪魔をして歯周病病原菌を上手に減らすことができません。
ここで歯石除去を行うと、歯石が取れて歯周ポケット内の歯周病病原菌を物理的に取り除くことができるので、結果として歯石除去が歯周病の治療になるのです。
この状態に戻すことができます
なので、歯石除去は歯石を取り除き歯を綺麗に見せる『美容』としての効果以外に、歯周病の『治療』という効果もあるのです。
さらに、当院はルーチンで歯の表面を磨く『ポリッシング』という処置も行い、歯石が再び着きにくくして歯石除去の効果が長続きするようにしています。
これにはいろんな考え方があるので、あくまで私個人の考えとしてお伝えすると、
『治療』としての歯石除去は、歯周炎になったり歯槽骨が溶けてきてしまうと、いくら歯石除去をして口の中を良い環境に戻しても、元通りに戻ることはありません。
なので、その前に歯石除去を行うのが良いのかなと考えています。
具体的なタイミングとしては、歯石がついて歯肉が少し赤くなってきて歯ブラシで出血するようになったら、歯石除去のタイミングだと思います。
それ以上置いておくと、治療しても元に戻らないところまで進行してしまうかも知れませんし、赤く腫れてきている歯肉にデンタルケアを行うことで動物が痛みを感じることも想定できるので、デンタルケアに嫌なイメージを持たないようにするためにも、そこが歯石除去のタイミングだと思います。
もちろんそれよりも早く、歯石がついたタイミングで歯石除去を行うのもOKだと思っています。それは麻酔管理がきちんとできれば、全身麻酔はそこまで危険な処置ではないと考えているからです。
歯石除去の話をすると、どうしてもこの話題が上がってきますのでここでも少し触れておこうと思います。
健康な動物において全身麻酔を行なった際の死亡のリスクは、およそ0.1〜0.2%と言われています。(Dodman and Lamb, 1992; Dyson et al.,1998; Joubert, 2000; Brodbelt et al., in press-a)
さらにこれは1992年の報告で、今では麻酔に関連する薬の情報も増え、またガス麻酔の普及や人工呼吸器の高性能化などにより、より安全な麻酔が可能になっていると思います。
数字の捉え方は人それぞれですが、私は上記のことから全身麻酔は比較的安全に実施できるようになってきていると考えています。ただ、100%安全ではないということは変わらないので、きちんとした術前検査と適切な麻酔管理を行うことはとても大事だと考えています。
また、より安全な全身麻酔を受けるために飼い主様ができることは、麻酔に力を入れている病院を選ぶのも一つかと思います。
これ最近よく耳にします。以前いた加古川ではそこまで聞かなかったのですが、北摂では行なっている施設が多いのでしょうか?
結論としては、全否定はしませんが歯周病の治療にはならないと思っています。(むしろ発見を遅らせる原因になることも)
最近、ワクチン接種で来られたコーギーさんがいて、その子の身体チェックをしていたところ歯は綺麗なんですが顎のリンパ節が結構腫れているんです。
耳や皮膚などにリンパ節が腫れそうな原因がなかったので、「おかしいな」と思い飼い主様に無麻酔歯石除去をしているか確認したところ、「してます」と言われました。
ここで何を言いたいかというと、この子は無麻酔歯石除去で目につくところの歯石はないものの歯周病になっていたんです。(結構口臭もありました)
歯石が歯周ポケットの蓋をして、歯周病病原菌が増えている様子
ここで無麻酔歯石除去をすると、以下の図のようになると考えられます。
歯肉より上の(目につく)歯石だけなくなっている様子
無麻酔歯石除去では、歯周ポケットには触らずに、目に見えるところの歯石だけ取られていることが多いです。
そうすると一見綺麗に見えますが、残った歯石が蓋をして歯周ポケットの中の歯周病病原菌は全く減っていません。
つまり、無麻酔歯石除去は歯周病の治療にならない(ことが多い)んです。
その一つの理由としては、歯周病で腫れている歯肉って触ると結構痛いので、麻酔かけてないと動物は触らせてくれません。そうするとどうしても、歯肉近くの歯石は取れないことが多くなります。
また、そんな痛みを伴う処置や金属の道具を無理やり口に入れられる恐怖を、意識のある中で動物にやることの方が動物福祉としても良くないんじゃないかと私自身思います。
無麻酔の利点もあるかと思うので全てを否定するつもりもないですが、私自身高齢の犬にも麻酔をかけることは多いですし、きちんと麻酔管理を行えば合併症もほとんど起きにくいので、私自身が無麻酔歯石除去に手を出すことはないと思っています。
ちょっと話が脱線しましたが、無麻酔歯石除去は歯石除去の『美容』効果しか果たさず、歯周病への『治療』効果はないと考えた方がいいかと思います。(リンパ節が腫れていたのは、結局歯周病が治療できていなかったからだと考えるので)
今回は、歯周病とはというところから、歯石除去の目的と、無麻酔歯石除去の欠点について書いていきました。
全身麻酔のところから無麻酔歯石除去は、私見も入っていますがご理解いただければと思います。
当院としては、麻酔科にも力を入れています。当面の目標としては、『ESSE動物病院の全身麻酔は他とは違う』と病院内外から言われるように、より豊富な知識の蓄積と当院の麻酔内容の情報発信など行っていければと考えています。
ESSE動物病院 院長 福間
大阪府吹田市青山台2−1−15(北千里駅から徒歩8分)
駐車場は10台以上あります。(豊中市、箕面市、茨木市、摂津市からも車で来院しやすいです)
皮膚科(アレルギー、アトピーなど)、腫瘍科(がん)、循環器科(心臓病、腎臓病)、外科手術(麻酔管理と痛みの管理をしっかり行います)を得意としています
健康診断、予防接種、フィラリア・ノミダニ予防、避妊・去勢手術も行います。ご相談ください