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大阪府吹田市・豊中市・箕面市の皆さん。こんにちは。ESSE動物病院の院長 福間です。
先日加古川の動物病院で『短頭種気道閉塞症候群』について説明しました。その時に、「この話って意外に知られていないんだな」と思い、季節がら重要な内容になってもくるので一度まとめて説明しようと思います。
内容は、
犬のいびきは大丈夫?
短頭種ってどんな犬種?
短頭種気道閉塞症候群って何?
どう治療すればいいの?
いびきをかく子は熱中症になりやすい?
このあたりを書いていきます^_^よろしくお願いします。
たまに受ける質問で、「うちの子いびきをかくのですが、これは大丈夫なんでしょうか?」というものがあります。
いびきは鼻から喉の奥にかけての上気道が狭くなることにより、呼吸の時に音がなる現象です。犬も眠ると筋肉が緩むことでいびきをかきやすくなると言われています。
短頭種という、フレンチブルドックなどの特定の犬種では特に多い症状かもしれません。
ただ健康な犬ではそこまでいびきをかかないと思います(寝息を立てる程度)。なので、いびきをかく犬の場合鼻や喉の奥が狭くなるような異常がある可能性を考えてもいいかと思います。具体的には、肥満、鼻炎、短頭種気道閉塞症候群などです。
また特に気をつけないといけないのは、起きている時にもいびきのような呼吸をする場合です。起きている時は筋肉が緩んでいないはずですが、それでもいびきの様な音で呼吸をするということはそれだけどこかがより狭くなっている状態を考え、より重い病気である可能性を考えるからです。
実は、先ほどちらっと出てきた『短頭種』が今回のテーマの中心でもあります。
ただ、短頭種と言われてもよくわかりませんよね。まずは短頭種がどんな犬かを挙げていきます。
短頭種とは、頭蓋骨に対しての鼻の長さが一定以上短い犬種をいいます。例えば、イングリッシュ・ブルドック、フレンチ・ブルドック、ボストン・テリア、パグ、ペキニーズ、シーズー、ボクサー、チワワなどです。
イングリッシュ・ブルドック / フレンチ・ブルドック
ボストン・テリア / ペキニーズ
パグ / シーズー
ボクサー / チワワ
写真を並べてみると、「あぁ、こういう子達ね」と思ってもらえると思います。
では、次にこの短頭種たちがかかる病気『短頭種気道閉塞症候群』という病気に触れていきます。
短頭種気道閉塞症候群とは、『短頭種がかかる呼吸のための空気の通り道が狭くなる病気の集まり』と理解してもらえればいいかと思います。
病気の集まりなので、色々な病気を含みます。
外鼻腔狭窄、軟口蓋過長症、気管低形成、気管虚脱、喉頭室外反、喉頭虚脱などです。
では次にこれらの病気を紹介していきます。
これは、鼻の穴が狭くなる病気です。外から見てもわかる感じで鼻が狭くなります。
左が正常。右が外鼻腔狭窄の鼻です。
これに鼻の穴を書くとこんな感じです。(青色)
左がラブラドール・レトリバーで、右がフレンチ・ブルドックですが、圧倒的にフレンチブルドックの方が狭いですね。
これでは鼻をつままれた状態で呼吸をしろと言っているようなものです。めちゃくちゃ呼吸するのが大変だと思います。
これは喉の奥にある軟口蓋というものが、通常よりも長くなっている病気です。それにより喉の奥が狭くなり呼吸がしづらくなったり、気管を塞ぐような形になることもあります。
これが軟口蓋過長症の犬の軟口蓋です。本来はこれくらいの位置に存在しています。
この子の軟口蓋は長いので、引っ張るとここまで出てきます。この引っ張って出てくる分が、余分な軟口蓋です。
気管というのは、喉と肺を繋ぐ空気の通り道です。気管低形成は、生まれつきこの気管が細くなる病気です。
この病気は、気管が生まれつきは正常ですが、その後年を重ねるごとに弾力がなくなり潰れやすくなる病気です。
本来は新品のゴムホースのようにしっかりとした筒なのですが、弱くなってくると呼吸をするだけでへこむようになってしまいます。
その結果、咳をしたり最悪呼吸困難になることもあります。
これは細かい説明は省きます。これらで大事なのは、生まれつきの異常ではなく他の病気で頑張って呼吸をし続けた結果発症する病気だということです。
そして、これらを発症することによりさらに呼吸がしづらくなります。
短頭種気道閉塞症候群はいろんな病気がありますが、どれも呼吸がしづらくなる病気でかわいそうですね。
では、どう治療すればいいのでしょうか?
治療には、内科と外科がありますが、基本的に短頭種気道閉塞症候群に関しては、内科=緩和治療、外科=根治治療というイメージでいいかと思います。(別に内科が大事でないという意味ではなく、治療の目的が違うという意味です。どっちも大事!!)
環境改善としては、
があります。どれもとても大事です!!
薬や処置としては、
があります。これらは、一時的に短頭種気道閉塞症候群が悪化した時の緊急対処として行うことが多いかと思います。
今回は、外鼻孔狭窄と軟口蓋過長症についての説明します。
外鼻孔狭窄には、「鼻孔拡張術」を行います。
これが手術前の見た目です。ほとんど潰れて鼻の穴が見えません。
これが術後1週間の同じ子の鼻の穴です。穴が広がっています。呼吸はとてもしやすそうでした。
軟口蓋過長症には、過剰な軟口蓋を切除する手術を行います。
これは、いろんなやり方がありますが、術後の感じを写真でお見せします。
この長い軟口蓋が、
奥に入り狭くするので、呼吸が苦しくなります。
これを、
こんな感じで切ります。(切除断面は隠させていただきました)
今まで軟口蓋で喉の奥が見えなかったのが、過剰な軟口蓋を切除すると奥まで見えるようになったのがわかると思います。
この2つの手術をした子は、術後呼吸の様子がとても楽そうだと飼い主様が話していました。
術前はいびき様の呼吸をしていましたが、術後は診察室で興奮しても普通の呼吸ができていたので、手術の効果はてきめんでした。
ここで大事なことをお伝えすると、
短頭種の子がガーガーと呼吸するのは、こんなもんと言えばこんなもんなのかもしれませんが、少なからず本人は頑張って呼吸をしているんだということは知っておいて欲しいなということ。
それと、生まれつきある短頭種気道閉塞症候群の異常は、外鼻孔狭窄と軟口蓋過長症だけのことが多いですがこれらによって頑張って呼吸する結果、気管虚脱などの他の病気にもかかり治療も困難になることがあります。なので、若い時(半年〜3歳くらい)にこの外鼻孔狭窄と軟口蓋過長症の手術をするのは、将来短頭種気道閉塞症候群で苦しまないためにできる予防の選択肢なのかなと思っています。もちろん手術の合併症も少なからずあることから、やればいい、という単純な話ではないと思いますが、短頭種と一緒にいるご家族には知っておいてほしい『選択肢』だと思っています。
これは夏に特に重要になってくる話です。
いびきをかく動物の中には、短頭種気道閉塞症候群のように上気道が狭くなっているものがいます。
短頭種気道閉塞症候群は、高体温になりやすいとされ熱中症のリスクが通常の動物よりも高くなります。なので、若干強引な気はしますがいびきをかく動物は熱中症になりやすいかも、と思ってもいいかもしれません。
今まで短頭種の子で、日中の短時間の散歩などでも熱中症になる症例もいました。呼吸が荒くなり、ガーガー・ゼーゼーいう様になったら熱中症を警戒して、すぐに涼しい(寒い)場所に連れていき適切な方法で冷やしてあげてください!(何が適切かは、また別の機会での説明か、直接質問いただければお答えします)
熱中症は、最悪亡くなる可能性もある怖いものです。少しずつ暑くなってきている今から、注意してあげてください。
ESSE動物病院 院長 福間
大阪府吹田市青山台2−1−15(北千里駅から徒歩8分)
駐車場は10台以上あります。(豊中市、箕面市、茨木市、摂津市からも車で来院しやすいです)
皮膚科(アレルギー、アトピーなど)、腫瘍科(がん)、循環器科(心臓病、腎臓病)、外科手術(麻酔管理と痛みの管理をしっかり行います)を得意としています
健康診断、予防接種、フィラリア・ノミダニ予防、避妊・去勢手術も行います。ご相談ください