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犬・猫の新しいがん治療法:電気化学療法の効果とメリット | ESSE動物病院 大阪府 吹田市|ESSE動物病院吹田|吹田市(北千里駅)・箕面市・豊中市の動物病院

犬・猫の新しいがん治療法:電気化学療法の効果とメリット | ESSE動物病院 大阪府 吹田市

大阪府吹田市・豊中市・箕面市の皆さん。こんにちは。

院長の福間です。

 

前回の投稿からまたかなり時間が経ってしまいました。

診療や病院のメンバーが働きやすくなるようにの取り組みなど、いろいろ忙しくさせていただいていました。

ただそんな中でも診療技術のアップデートは欠かさず行っているつもりです。

その中の1つが今回の内容である「電気化学療法」になります。

新しく治療機器も導入して、この電気化学療法が当院でも実施可能になりました。

電気化学療法は、がんの3大治療である外科、放射線、化学療法のうち、放射線治療の代替療法になり得る、かなりすごい治療法になります。

愛犬ががんと診断されたとき、多くの飼い主は新しい治療法を探しています。最近注目を集めている治療法の一つが、電気化学療法です。このブログでは、電気化学療法の基本、メリット、リスクについて詳しく解説します。

 

 

⚫️電気化学療法(ECT)とは?

電気化学療法(ECT)は、電気パルスと特定の抗がん剤を組み合わせる新しい犬や猫へのがん治療法で、特にがん細胞への局所的な影響が期待されています。この治療法は、がん細胞に抗がん剤を効率よく届けることができ、周囲の健康な細胞へのダメージを最小限に抑えることが可能です。

 

 

⚫️電気化学療法(ECT)の歴史

1997年にヨーロッパで獣医学において導入され、ラテンアメリカでは2008年から使用されています。ヒト医療では1991年に最初の臨床試験が実施され、2006年にはECTが標準治療となり、そのための標準的な操作手順が発表されました。

獣医学においても、ECTは世界中の多くの国で標準的な治療法として利用されています。特にスロベニア、ブラジル、アルゼンチンで行われた獣医用のトレーニングコースの普及により、ECTの使用は急速に広がりました。

 

 

⚫️電気化学療法(ECT)の原理

電気化学療法(ECT)の原理は、電気パルスによって細胞膜を一時的かつ可逆的に透過性を持たせることで、抗がん剤の細胞内取り込みを劇的に増加させるというものです。これにより、ブレオマイシン、シスプラチンなどの薬剤の効果が、通常の数倍〜数百倍に増加することが確認されています。

 

 

⚫️電気化学療法(ECT)の効果

「Veterinary Guidelines for Electrochemotherapy of Superficial Tumors. Tellado et al. 2022 」より。 口腔内メラノーマの症例で、左が治療前、右が治療開始から4ヶ月後の写真。

電気化学療法(ECT)は、特に犬、猫、馬、さらにはヒト患者において、70%から100%の高い治療効果を示しています。たとえば、悪性黒色腫では初期段階で約90%の効果が見られ、扁平上皮癌では約80%、肉腫では約97%、そして2立方センチメートル以下の肥満細胞腫瘍では100%の治療効果が報告されています。

また、抗がん剤の直接的な効果だけでなく、場合によっては「アブスコパル効果」を引き起こすことがあると考えられています。これは免疫不全マウスでは治療効果が著しく低下することが確認されているからです。

※アブスコパル効果:がんへの放射線などの局所治療によって、抗腫瘍免疫が活性化され治療をしていない他の病変(電気化学療法が届かなかったところや、転移病巣など)にも縮小効果が見られる現象

 

 

⚫️電気化学療法(ECT)の実際の流れ

「https://onkodisruptor.com/electrochemotherapy-clinicalinformations/veterinary-electrochemotherapy-protocol/」より

 

実際の当院での治療の流れを説明していきます。

1.  麻酔前検査を当日、もしくは事前に行い全身麻酔リスクの評価をします。

2.  当日は絶食・絶水で午前中にご来院いただきます。

3.  お昼の間に処置を行います。

     実際の処置は、

 全身麻酔をかける → バイタルの安定を確認 → 抗がん剤の投与 → 投与8分後に電気パルスの処置実施 → 処置終わり次第麻酔覚醒へ → 終了

 という流れで、処置時間は20〜30分ほどです。

4.  午後の診察時間にお迎えに来ていただきます。

5.  状況に応じて、必要な薬を処方します。

6.  通常1週間後の再診をお願いしています。

 

この治療を腫瘍の種類や状態にもよりますが、3〜4週ごとに2〜5回ほど実施します。

必要な費用は、全身麻酔の処置費用なども含めて10万前後になります。(麻酔前検査は含めずの金額です)

 

「Veterinary Guidelines for Electrochemotherapy of Superficial Tumors. Tellado et al. 2022 」より。鼻の扁平上皮癌の猫で(a)はECT当日。(b)では1ヵ月後に腫瘍が再増殖したため、2回目のECTを行った。(c)では、2回目のECTの1ヵ月後に完全奏効が得られた。(d)では、患者は4ヵ月後も無病のままである。

 

1回の治療で終える場合もありますし、上記の症例のように2回以上の処置を行う場合もあります。

 

 

⚫️電気化学療法(ECT)のメリット、デメリット

このような電気化学療法にももちろんメリットとデメリットの両方があります。

それをわかりやすくまとめると、

🔵メリット

  • 電気化学療法単独で、腫瘍の縮小効果などが期待できる
  • 1回の治療で効果が見られることもある。
  • 外科手術を回避できる可能性がある。
  • 治療時間(麻酔時間)が短い。
  • 放射線治療と比べて、コストが低い
  • 外科治療後の再発予防のための追加治療として期待できる。
  • 放射線治療と比べて、放射線被曝がない

 

🔴デメリット

  • 全身麻酔が必要である。
  • 治療可能範囲が、口や体表皮膚などアクセス可能な部位に限定される。
  • 治療後の痛みや腫れが見られる。
  • 大きな腫瘍の場合、著しい縮小により病変部位の欠損が起きることがあり、その場合救済的な外科処置が必要な場合がある。

 

 

 

⚫️電気化学療法(ECT)はどのような場合に適応されるのか

「https://onkodisruptor.com/electrochemotherapy-clinicalinformations/veterinary-electrochemotherapy-protocol/」より

電気化学療法(ECT)が有効な治療になりうる場合は、以下のような腫瘍や状況です。

  • 肥満細胞腫
  • 皮膚の扁平上皮癌
  • 棘細胞性エナメル上皮腫
  • 口腔内メラノーマ
  • 局在する皮膚型リンパ腫
  • 全ての体表、体表付近、口腔内腫瘍(外科手術後の補助療法として)

 

 

⚫️電気化学療法(ECT)へのQ&A

Q. 犬や猫のがん治療において、電気化学療法はどれぐらい効果を期待できますか?

 A. 「適応となる腫瘍の種類であれば治療効果はかなり高く、1回の治療で腫瘍が縮小することも期待できます。」

 

Q. 電気化学療法による犬や猫への副作用はありますか?

 A. 「多くは処置部分の痛みと腫れです。これには状況に応じて、鎮痛薬や抗菌薬などで副作用を和らげる治療を行います。」

 

Q. 電気化学療法で使う抗がん剤の副作用は重くないですか?

 A. 「私たちが使用する抗がん剤はブレオマイシンとシスプラチンですが、電気化学療法と併用することで投与量自体も減らすことができ、抗がん剤自体による副作用は軽度です。」

 

Q. 電気化学療法を犬や猫のがん治療で用いた場合、追加治療が必要かはいつ判断するのですか?

 A. 「個体によりますが、多くは3〜4週後に状態を評価して追加治療の必要性を検討します。」

 

Q. 電気化学療法を犬や猫のがんが完治することはありますか?

 A. 「腫瘍の種類と個体によりますが、完治と判断された症例も報告されています。ただ、転移をしている/しやすい腫瘍は完治を目指すのは難しいとも考えます。」

 

Q. 電気化学療法を受けたいのですが、近くで実施している施設がないのですがどうすればいいでしょうか?

 A. 「電気化学療法は、機械の持ち運びもできますので出張治療も検討しております。一度ご相談いただければできる範囲にはなりますが、お力になれればと思います。」

 

 

 

⚫️まとめ

電気化学療法という、犬や猫のがん治療には馴染みがない治療だったと思いますが、いかがだったでしょうか?

まだ、知名度の低い治療かもしれませんが、きっとこの先広がっていく有効性の高いがん治療だと考えています。

まだ関西で電気化学療法の機械を持っているのは、2〜3施設とも聞いていますので日本の獣医療の中でも希少性のあるがん治療になるかと思います。ただ、腫瘍の適応範囲を適切にすればかなり有効性の高い治療になります。

そして、同じようなポジショニングとなる放射線治療機よりも導入する制限が少ないのも特徴です。

今年は電気化学療法研究会も立ち上がり、この治療が希少性のないがん治療として普及していくと信じています。

これからも引き続き、犬や猫のがん治療の向上に努めてまいります。

 

また、この電気化学療法についてもっと知りたい方は、ESSE動物病院までお気軽にご相談ください!

 

 

引用元

・https://onkodisruptor.com/

・Veterinary Guidelines for Electrochemotherapy of Superficial Tumors. Tellado et al. 2022 

 

 

 

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ESSE動物病院 院長 福間

大阪府吹田市青山台2−1−15(北千里駅から徒歩8分)

駐車場は10台以上あります。(豊中市、箕面市、茨木市、摂津市からも車で来院しやすいです)

皮膚科(アレルギー、アトピーなど)、腫瘍科(がん)、循環器科(心臓病、腎臓病)、外科手術(麻酔管理と痛みの管理をしっかり行います)を得意としています

健康診断、予防接種、フィラリア・ノミダニ予防、避妊・去勢手術も行います。ご相談ください

 

 

院長 福間 康洋
院長 福間 康洋
記事監修
院長 福間 康洋(フクマ ヤスヒロ)
  • 日本獣医腫瘍科認定医Ⅱ種(吹田市で1人、大阪府で30人[2023年4月時点])
  • 日本獣医腎泌尿器学会認定医
  • 獣医教育・先端技術研究所 腹部・心臓超音波研修 修了
  • 日本獣医皮膚科学会所属
  • 日本獣医がん学会所属
  • 日本獣医循環器学会所属
  • 日本獣医腎泌尿器学会所属
  • 日本獣医救急集中治療学会所属
  • 日本小動物歯科研究会所属
  • 日本獣医麻酔外科学会
  • 2015年:鳥取大学獣医学科卒業
  • 2018年:犬とねこの皮膚科 研修生
  • 2018~19年:ネオベッツVRセンター 研修生(内6ヶ月間)
  • 2021年:ESSE動物病院 開院
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