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元気だった愛犬が急に倒れてしまったら、誰でも強い不安を感じると思います。
犬の失神の原因のひとつに、心タンポナーデによるものがあります。
心タンポナーデとは心臓の周りに液体がたまり、心臓がうまく動かなくなってしまう怖い病気です。
心タンポナーデの原因として、心臓腫瘍によるものが知られています。
この記事では犬の心タンポナーデと心臓腫瘍の関連、主な症状について詳しく解説いたします。
ぜひ最後までお読みいただき、犬の心タンポナーデについて知見を深めてください。

心タンポナーデとは、心臓を包む心膜という膜の内側に血液などの液体が溜まって、心臓が圧迫されてしまう病気です。
心臓は身体に血液を送り出すポンプの役割をしています。
ポンプである心臓の動きが液体に押されて動けなくなると、血液を十分に全身へ送り出せなくなってしまいます。
犬で心タンポナーデを起こす主な原因は以下のとおりです。
この中でも、最も多い原因は心臓腫瘍によるものです。
心臓やその周囲に腫瘍ができると、腫瘍から出血して心臓の周りに血液がたまることがあります。
この血液が心臓を圧迫し、心タンポナーデを引き起こします。
心タンポナーデが進行し心臓が圧迫されると、
という症状が出ます。
これらの症状はゆっくり進むこともあれば、数時間〜数日で急に悪化することもあります。とくに心臓の腫瘍が破裂してしまった場合は、大量の出血によって急激にショック状態になり、突然死を引き起こすこともあるため注意が必要です。
心臓腫瘍は、心臓やその周囲の組織にできる腫瘍の総称です。
犬では比較的まれな腫瘍ですが、高齢犬や大型犬に見つかることが多く、心タンポナーデの原因として重要です。
代表的な心臓腫瘍をいくつかご紹介します。
血管肉腫は犬の心臓にできる腫瘍の中で最も多い悪性腫瘍の一つです。
心臓の中でも特に右心房にできることが多いです。
脾臓に同じタイプの腫瘍ができて、そこから心臓に転移してくるケースもよく見られます。
腫瘍そのものがもろく、破れやすいため、ある日突然出血して心臓の周りに血液がたまり、心タンポナーデを引き起こすことがあります。
元気に過ごしていたのに、急にぐったりして倒れてしまうケースも少なくありません。
ゴールデン・レトリーバーやジャーマン・シェパードなどの大型犬に多いとされています。
ケモデクトーマは、心臓の付け根の大動脈付近に認められることが多い心基底部腫瘍の一つです。
血管肉腫と比べると進行はゆっくりなことが多く、すぐに破裂して出血するタイプではありません。
しかし腫瘍が大きくなることで心臓を圧迫し、結果的に心タンポナーデを引き起こすことがあります。
ケモデクトーマはボクサーやボストン・テリアなどの短頭種に多く見られます。
リンパ腫や甲状腺癌などの腫瘍が、他の臓器から心臓に転移する場合もあります。
とくにリンパ腫は血液やリンパの流れにのって全身に広がりやすい腫瘍です。
そのため心臓周囲に病変をつくることがあり、心膜に液体がたまる原因となることがあります。

心臓腫瘍が原因の場合の心タンポナーデの治療は、主に以下の3つの治療に分かれます。
それぞれ詳しく解説していきましょう。
心タンポナーデを起こした犬の治療では心膜穿刺や心膜切除などの対症療法を行うことがあります。
心膜穿刺は心臓の周りに溜まった液体を抜き、心臓の圧迫を解除する処置です。
これにより、一時的に心臓が動きやすくなり症状が劇的に改善することがあります。
ただし、腫瘍が原因の場合はまた出血して液体が溜まってしまうこともあるため注意が必要です。
また、心タンポナーデを繰り返している場合には心膜切除が検討されることがあります。
心膜を一部切除することで、出血や心膜液が心臓の周囲にたまらず胸腔内へ逃げるようになり、心臓が圧迫されにくくなります。
この手術は腫瘍そのものを治す治療ではありませんが、心タンポナーデによる苦しさを軽減し、生活の質(QOL)を保つことが可能です。
心臓腫瘍に対する治療としては、
が主な治療法になります。
ただし、心臓の腫瘍は場所や大きさの関係で、外科的に完全切除できないケースも多く、完治が難しいことも少なくありません。
抗がん剤は血管肉腫やリンパ腫などで選択されることがあり、腫瘍の進行を抑える目的で行われます。
とくに血管肉腫が原因の場合は、治療が困難になるケースが多いです。
その際は根治を目的とした治療から、穏やかに予後を過ごせるように緩和治療に切り替えていく場合もあります。
などを行い、可能な限り生活の質(QOL)を保っていきます。
血管肉腫は無治療の場合は、ごく短期間で急変して亡くなってしまうこともあります。
治療した場合でも余命は数ヶ月程度とされており、完治が難しい疾患です。
一方、ケモデクトーマなどの心基底部腫瘍は比較的ゆっくり進行し、数ヶ月〜数年生存する場合もあります。
心臓の腫瘍が原因で心タンポナーデを起こしている場合はすでに重い状態になっていることも少なくありません。
心臓の腫瘍は健康診断や心臓の検査で早い段階で見つかることもあります。
気になる症状がある場合は早期に動物病院を受診しましょう。

心タンポナーデは、心臓の周りにたまった液体が心臓を外側から圧迫し、突然命に関わる状態を引き起こす怖い病気です。
とくに心臓腫瘍が背景にある場合、早期に見つけることがむずかしく、症状として現れたときにはすでに重い状態になっていることも少なくありません。
一方で、健康診断や心臓検査で早い段階で心臓の異常が見つかれば、その後の方針をじっくり相談しながら決めていくこともできます。
「最近疲れやすい気がする」「なんとなく呼吸が速い」など、少しでも気になるサインがあれば、早めにご相談いただくことが愛犬の健康寿命を守ることにつながります。
当院では循環器科の診療に力を入れ、心臓腫瘍や心タンポナーデの診断・治療にも取り組んでいます。
検診のご相談から、治療や緩和ケアまで、気になることがありましたらいつでもご相談ください。
大阪府吹田市の動物病院
ESSE動物病院吹田